「パパね、ママのことぶった」ママ友はなぜ子どもを置いて消えたのか…誰もが抱える心の闇を丁寧に描いた話題作【書評】
有紀が生きているのかどうかすら分からない事実により、物語の不穏さが加速する。春香は嫌な想像を拭うように有紀に連絡するのだが、有紀の夫のノボルがその携帯を持っている姿を目撃してしまう。かつて有紀が春香にこぼした「死にたい」という言葉にDVをほのめかすツバサ君、そして失踪した有紀の携帯を持っているノボルの姿。 まるで最悪の事態を裏付けるかのような事実に、春香たちは有紀の家族に対する疑惑を膨らませていく。
ここから先では有紀の失踪の真実を追い求めていくストーリーを軸に、春香やヨリコ、友子たちママ友のほの暗い感情が描かれていく。キラキラしていた有紀への嫉妬や憧れに、子育ての孤独さ。そして、子どもたちのいじめ問題により、仲の良かったママ友同士の関係に亀裂が入ってしまい…。 本作は、きっと誰もが抱える心の闇が丁寧に描かれていることが魅力の物語だ。明日自分にも同じことが起こるかもしれない。そんなリアルさを感じながら、消えたママ友の真実を見届けてもらいたい。 文=ネゴト/ 押入れの人