なぜ「ダイソー釣り具」に私たちは魅了されるのか 「100均ビジネスの救世主」になりうる商品の顔ぶれ
その手掛かりになるものがある。「ジャンクジャーナル」をご存じだろうか。ジャンク=役に立たないこまごましたものを、ページに張り付けた手帳といったイメージで、貼るのは古本の切り抜きやラッピングペーパー、チケットや便せん、ポストカード、シールやラベルなど、紙なら何でもいい。スクラップブックに似ているが、何かテーマがあるというより、とにかくかわいい紙モノやシールを組み合わせてコラージュし、ページを目いっぱいデコることが身上だ。さらに、その上に小さなポケットやリボンを貼り付けて、そこにメッセージカードや写真を入れたり挟んだり。
筆者も子どもの頃にかわいいメモ帳やシールを集めたりしたものだが、それらを全部詰め込んでつくる、まさに乙女&乙メンのファンタジー帳だ。 こちらも、コロナの少し前からブームになっていたらしい。とりわけクラシックなセピア調が人気で、セリアで見かけたペーパーは、ジャンクジャーナルのコラージュ素材として重宝されていると知った。 同じくかわいらしい紙モノを駆使して作る「おすそ分けファイル」も人気だ。で、最近100均にずいぶんファンシーなマスキングテープや折り紙が増えたなと感じていたが、背景にはこうした需要があったのか。
YouTubeの作り方動画を見ていると、製作にはたいがい100均の紙モノが多用され、素材紹介もされている。ジャーナルやファイルの1ページを作るのには、土台になる紙、それに貼りつける折り紙やデザインペーパー、紙を貼るための両面テープやマスキングテープ、ポケットを作るために別の折り紙、出来上がったポケットを飾るシールやリボンなど、実に多数の素材が必要になる。それを何ページも作るのだ。100均の売り場に行って、必要だと思われるものを選んでいくうちに、1000円などあっという間に突破するだろう。
「推し活手帳」づくりに活用する客も多い。推しの写真をページのメインに配置して周囲にキラキラしたシールをちりばめて、自分だけの世界を作り上げることができる。これもまた、100均の材料を消費する。 こういうものは、一つ作るとまた次を作りたくなるもの。また違う紙モノを買ってきて、その世界観にあう素材を集めて――以下、繰り返しの消費沼が口を開けるのだ。紙モノは、見た目はファンシーだが、いくらでもお金を吸い込んでしまうモンスターの棲家に違いない。