キコニワ、グラツナなど障害に関わるコンテンツを発信し続ける株式会社方角の思い
――コミュニケーションにおける工夫とはどのような方法でしょうか? 方山:例えば聞こえる社員と聞こえない社員がやり取りするときはチャットを使えばいいですし、離れた場所にいる聞こえない社員同士はオンライン会議機能を利用して、手話で話しています。 いまの時代、いくらでも方法があるので、やり方次第ですよね。
「まずは自分たちのことを知ってもらいたい」という聴覚障害者の思い
――聴覚障害のある方々と出会ったことで見えてきたものがありましたか? 方山:そうですね。考え方は180度変わったと思います。それまでの私は障害に関して本当に無知でした。でも、聴覚障害者の方々と関わるようになって、課題が山積みなことに気付いて、とてもショックを受けたんです。 聞こえる人が前提のものが世の中にはたくさんあります。エレベーターが急に止まってしまったら、流れるのは音声アナウンスです。「聞こえない人たちはどうするんだろう?」と、聞こえないことによる日常生活での困りごとも、具体的に想像できるようになりました。 障害者の労働環境についても疑問があります。現状の障害者雇用って、採用した障害者には制限のある仕事しか任せなかったり、可能性を発揮できない環境しか用意していなかったりするんですよ。障害者であっても、障害のない人と遜色なく働ける環境を整備するのが、真の障害者雇用だと思っています。 だから、そういった就業に関する問題点を改善していく取り組みを始めなければいけないと考えているところです。 ――方角では聴覚障害についての情報発信にも力を入れています。それは聴者にもっと理解してもらいたい、という思いがあるからでしょうか? 方山:そうですね。当事者の方と話していて思うのは、「世の中の人に自分たちのことをもっと知ってほしい」と感じている人が多いということです。 障害者雇用を考えているという企業の方とお話しする機会もよくあるのですが、その際も「働き方うんぬんの方法論よりも、一人一人のパーソナリティを理解することが大事ですよ」という話をしています。 ですので、私たちの方から知る機会を増やして、「聴覚障害? なんかあの記事で読んだことあるな……」という人を増やせればいいなと思っています。