森山未來×avex加藤信介×山峰潤也が語る。現代アートの新時代を切り開くための「MEET YOUR ART」
現代アートの「型を破る力」こそが、これからの時代を切り開く
―『MYAF2024』も見どころがたくさんありました。エキシビション、フェア、ライブ、トーク、それにマーケットやフードもある。しかも西麻布に構えるWALL _alternativeでは、関連企画「FAYM2024」も開催していましたよね。そのなかでも、これから特に伸ばしていきたい分野はあったりするんでしょうか? 加藤:MEET YOUR ARTって「アートのどの役割をやりたいの?」とよく聞かれるんですが、いい意味で既存の役割に当てはめたり一つに限定せずに色々やっていきたいんです。今のアート領域でダイナミックに価値貢献したり影響力を持って事業推進していくためには複合的なプロジェクトであるべきだと思いますし、複合的なプロジェクトとして進めていくことで繋がりが生まれてそれぞれのピースが5にも10にもなると信じていますから。 いずれにしても今後はさらにアート面の強度を上げながら、入口の敷居を下げていく。事業をスケールさせていくなかで、このバランスをより的確に持続させていくことが目標ですね。 ―森山さんは番組に4年間出演されて、アートワールドのたくさんのプレイヤーと対話を重ねてきたと思いますが、現代アートのどんなところに興味を惹かれますか? 森山:先日聞いたところ、4年間で100人ほどにインタビューしているみたいです(笑)。すごい数ですよね。 僕がアーティストの方の話を聞いていて思うのは、「作為と無作為」のバランスに関してです。作為から離れるための表現方法を求めているアーティストが多いんだと気づきました。 それは僕も同じです。たとえば僕は近年、舞踏にフォーカスしています。抽象的な言葉を身体に取り込み拮抗させることで、そこに舞踏が立ち上がってくる。 ―そこに作為を超えた無作為が出てくるわけですね。 森山:今はそう考えています。また、コンポジションなども重要です。そこにいる人やオブジェクトの配置によって、自然と自分の場所を移動させることがありますよね。それも動かされる身体と言える。 ただ一方で、身体を司る最終的なジャッジを下しているのは自分でしかない部分もある。作為と無作為、主体と客体。そんなことを考えながら、アーティストの方の話を聞いています。 ―2023年にNHKで放送された、森山さん出演の映画『シン・仮面ライダー』のドキュメンタリーを思い出しました。あれも無作為の身体を引き出そうとする庵野秀明監督と、それでも自分たちで決断しながら演技を続けなければならない役者陣との葛藤に満ちてましたよね。 森山:あはは、あの現場はたしかにそうでしたね(笑)。 あとコロナ以降に自分のなかで起きたのは、ローカルに対する意識の変化かな。制限された環境のもとで何をやれば面白いのか、以前とは別の選択肢が生まれた気がするんです。ここ数年はいろんな地域の芸術祭に関わらせてもらいながら、地域での出会いであったり、それこそMEET YOUR ARTでのアーティストさんとの対話などから、さまざまなフィードバックをもらっているとつねづね実感しています。 ―先ほど境界に立つという話もありましたが、新たなマーケットやムーブメントにコミットしてきた山峰さんの考える、これからのアートシーンに対する展望は何かありますか? 山峰:ハウスキュレーター(美術館所属の学芸員)だと展覧会はつくれるんですが、業界自体をどうするかというところに関わるのは難しかった。それからインディペンデントキュレーターとして活動してきたうえで、いまはアートワールドのサーキュレーション(循環)について再考する必要性を感じています。まさに未來くんが言っていたように、人と対話をしながら表現の本質に深く向き合えるような場なんて大事ですね。 そもそも世の中では、スタイルの確立されたものを踏襲するほうが、世の中での認知は早いわけです。情報を拡散したり資本を増やしたりするには、すでに知られているもののほうが都合がいい。ただ、現代アートの世界はその真逆。すでにある型をどう破るか、あるいはどう崩すかなので、その先に見たことのないものが出現するんですよ。しかし、型が身についていなければ、型を壊すことができない。それでは型なしなんです。そこが難しくて面白い。 いま世の中に必要なのは、これまで築かれてきた型をしっかり分析して崩していく。そして残すべきことと変えるべきことを見分けながら、新しい時代を切り開いていくことだと思います。その点に関して、現代アートは何らかの気づきを与えることができるはずです。僕としては『MYAF』も含めて、そんな現代アートの可能性を発信し続けていきたいですね。
インタビュー・テキスト by 中島晴矢 / 撮影 by 寺内暁 / 編集 by 生田綾