「閉ざされていた」日本の大学、海外に活路 筑波大・東大・京大…「知の交流」へ分校や拠点設置
前例がなく手探りで2カ国の規制をクリアしてきたが前途は多難だ。イスラム圏や東南アジアから学生を呼び込み、教育のハブを目指すマレーシアには既にイギリスやオーストラリア、中国などの海外10大学が進出し、競争は厳しい。筑波大の1期生は日本人とマレーシア人だけで、定員40人には満たなかった。文部科学省は大学の海外進出を支援するが、事例は極めて少ない。 ▽円安が痛手 先行したケースの一つが東海大だ。1992年にアメリカ・ハワイに短大の「ハワイ東海インターナショナルカレッジ」を開設した。日本人を中心に約120人が在籍し、8割以上がアメリカ内外の4年制大学に編入する。 吉川直人学長は「日本の学生に進路の選択肢を増やし、アメリカの学生には日本の大学に編入してもらいたい。いわばゲートウェイ(通路)の役割を果たしたいと思っている」と話す。「日本もアメリカも中国も台湾も韓国も、同じ世代が同じ寮に住み、異文化コミュニケーションができる学生を育てたい」と狙いを説明した。
一方で、新型コロナウイルス禍に続く円安やハワイの物価高は痛手だ。「経営を考えると、学生数が足りない。アジアのさまざまな国からもう少し学生を呼び込みたい」と展望を語った。 ▽流れつくれず アジアでは存在感を高めようと他の大学も動く。名古屋大はシンガポールに起業教育プログラムのための拠点を2023年に設けたほか、京都大も現地のスタートアップとの協力を模索する。 間もなく世界3位の経済大国に浮上するインドでは東京大や立命館大が首都ニューデリーに事務所を置き、日本に留学生を呼び込む。東大の場合、大学院を含むインド人留学生数は事務所を設置した2012年の計29人から2024年には計82人に増えた。だが全体の約1.6%に過ぎず、首位の中国の3396人に遠く及ばない。日本全体でもインド人留学生は伸び悩む。 東大の林香里理事・副学長は「中国から10万人ほど留学しているが、インドでは流れをつくれていない。中国や韓国は歴史的な共通点や地理的な距離感があるが、インドが(日本の大学について)いつか分かってくれれば流れができるだろうという姿勢では難しい。てこ入れをしていこうと考えている。可能な限り戦略を練って動いていきたい」と話す。