「閉ざされていた」日本の大学、海外に活路 筑波大・東大・京大…「知の交流」へ分校や拠点設置
筑波大が9月、マレーシア校を首都クアラルンプールに開設した。大学の本格的なアジア進出の先駆けで、他大でも拠点を設け研究や留学を通じた「知の交流」を促進しようとする動きが活発化している。少子化を見据え、存在感向上を目指すが、乗り越えなければならない課題は多い。日本の高等教育の国際化は本格的に進展していけるのか、実情と課題を取材した。(共同通信シンガポール支局・本間麻衣、ニューデリー支局・岩橋拓郎) ▽大学の「冒険」 9月2日、クアラルンプール郊外の名門マラヤ大から間借りした校舎の開校式で、筑波大の永田恭介学長が「日本型、そして本学型の教育輸出であり、本学にとっての新たな冒険だ」と強調した。1期生となったマレーシア人7人、日本人6人の計13人の新入生は大勢の大人からの温かい拍手で迎えられ、背筋を伸ばした。日本人の新入生の一人は「初めての1人暮らし、初めての海外生活となる。4年間で得られるものを吸収していきたい」と抱負を語った。
設置したのは新たな学部の「学際サイエンス・デザイン専門学群」。筑波大の強みとするデータサイエンスを軸に理系、文系の垣根を越える教育を提供する。海外で初めて日本の学部の学位を授与する大学として筑波大の教授や准教授ら14人が専任で教壇に立ち、情報工学や生命環境学、政治学などを教える。講義は日本語と英語で実施し、日本語は必修科目。学費は「欧米の大学と地元国立大の中間ぐらい」(大学関係者)に設定したという。 「日本留学は金銭的に大変で機会が限られていた。マレーシアで日本の教育が受けられるようになる」。マレーシアから日本への留学経験者グループ、東方政策元留学生同窓会のイスラミ会長はこう語り、筑波大の進出を歓迎した。 ▽元首相の要望 日本や韓国の経済成長に学ぶルックイースト(東方)政策を推進したマハティール元首相の要望で約6年かけて実現した。自身も子どもを日本に留学させており、開校後はオリエンテーションに駆け付けて学生ら一人一人と握手を交わした。誘致関係者は日本の少子化を念頭に「大学も海外に活路を見いだす必要がある。先に一歩踏み出した大学が有利だ」と語る。