コウモリの赤血球で新発見、宇宙旅行の「コールドスリープ」実現に活かせる可能性
「この研究には重要な示唆が含まれています」
人間の赤血球に変化を起こし、コウモリのようにできたなら、人間の冬眠の実現に一歩近づく可能性がある。 「この新たな研究は、人間を冬眠状態に導くパズルの一片と言えるでしょう」と、独オットー・フォン・ゲーリケ大学で宇宙医学を研究する分子生物学者のマルクス・クルーガー氏は言う。 「しかし、まだ答えの見つかっていない重要な疑問が数多く残っています。たとえば、人間において冬眠状態を誘発するにはどうすればいいのでしょうか。それは脂肪の蓄積と関係しているのかもしれませんし、食事を断つことや、薬理学的なサポートによって実現できるのかもしれません」 また、何らかの薬剤を使うことで、冬眠に入る前に、弾性に対して大きく粘性を増すよう、人間の細胞に指示を出すことが可能なのかどうかもわかっていない。 もちろん、人が火星に行けるようになるまでには、ほかにも解決すべき問題がたくさんある。宇宙への旅は、放射線にさらされ、体や筋肉が衰え、そして常に狭い空間に閉じ込められることを意味する。 当然ながら、物資の問題もある。火星への往復の旅において人々を生存させるのに必要な食料や燃料を運ぶには、およそ70機ものシャトルが必要だ。 それでも、今回の発見は興味深いものだと、米マイアミ大学の血液学者ミカエル・A・セケレス氏は述べている。 「人間が長期にわたって冬眠状態に入れるかという問題について、この研究には重要な示唆が含まれています。いつか冬眠が実現した暁には、あの映画に登場する可哀想な乗組員のようにエイリアンに襲われることなく、幸せな結末が訪れることを願いたいものです!」
文=Sarah Philip/訳=北村京子