ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」、経済制裁で苦しむのはむしろ「消費重視」の西側世界
これらの点をふまえれば、国家の経済力を示すものとしてのGDPの指標は、すでに崩壊しているといえます。それがはっきりと見える形をとるのは、繰り返しになりますが戦争が起きたときです。 結局、国力というものが端的にわかるのは戦争に強いか弱いかであって、当然戦争に強い国のほうが国力は上なのです。 ■アメリカの弱体化が暴く「GDPの噓」 今回、まさにロシア・ウクライナの紛争で、「戦争の強さ=国力の大きさ」が如実に示されました。2023年の時点でGDPがアメリカの約7パーセントにすぎないロシアが、アメリカの支援するウクライナと互角、あるいはそれを凌駕する戦いを見せている現実を見ると、GDPがその国の実力を反映していないのはもはや明らかです。
ウクライナ問題とパレスチナのガザ地区をめぐる問題で、アメリカの今の実力はこんなものだということが世界に知られてしまいました。ロシアにしても、ハマスにしても、中国にしても、じつはその点をよく見ています。 アメリカはなんとかこの状況をうまく乗り切りたいと思っていますが、アメリカの国力自体が弱体化している今、それは難しいでしょう。 エマニュエル・トッドは『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』の中で、ウクライナ紛争にともなうロシアへの経済制裁について、
一見、『戦争』を回避するための『平和的手段』に見えても、その究極の目的は『相手国の破壊』にある、かなり暴力的な手段なのです。現在、西洋諸国とロシアが互いに科している経済制裁は、長期化すればするほど、双方にダメージを与えるでしょう。しかし、西側メディアの論調とは違って、ロシア経済よりも、『消費』に特化した西側経済の脆さのほうが今後露呈してくると私は見ています。(『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』)
と述べています。 この言葉は、生産する国(ロシア、日本、中国など)ではなく、消費する国(アメリカやフランス、イギリスなどの西側諸国など)のほうが、戦争が起きれば、経済的ダメージをより受けやすいという点を的確に示しています。 なぜなら、戦争が長期化すればするほど、過酷になればなるほど、食料や武器、エネルギーなどの実際につくり出される物資(商品)が重要になっていくからです。 ■80年も使い続けてきた「惰性」にすぎない