ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」、経済制裁で苦しむのはむしろ「消費重視」の西側世界
先に触れた『経済成長って、本当に必要なの?』には、「ノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツとアマルティア・センは、GDPを増やそうとする政策が、国民の生活の質を貶めていると指摘している。この時代遅れの経済目標を使い続けている理由は、80年間も使い続けてきた惰性にすぎない」という記述もあります。 この発言は、GDPがある国の現在の経済状況を測るための一基準にしかすぎず、それによって国民1人ひとりの生活の真の満足感や幸福感といったものは測ることができないということを意味しています。
経済学者は自明のものとしてGDPを経済や財政の分析に使っていますが、もはやそれだけでは国力を測ることができないことに気がつくべきだと私は思います。 ひと昔前にもてはやされた基準だけを追い求めることで、失ってしまうもののほうが大きいということや、そもそもその数字では測れないものが多数存在していることを私たちは自覚すべきなのです。
佐藤 優 :作家・元外務省主任分析官