ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」、経済制裁で苦しむのはむしろ「消費重視」の西側世界
基本的には、GDPではなく、購買力平価で経済の動向を測るのが現実的といえます。購買力平価の実体に近づけて測るようになると、全然違う様相が見えてきます。 そうした計測で見れば、日本はまだ豊かであるという結果が出ると思います。私たちの見えないところで、かなりの数の品物の流れが起こっているはずです。そうした現象を見ずにGDP中心主義を押し通していくと、実体経済というものが見えなくなってしまうのです。 ■旧ソビエトではサービス業を入れない統計方法も
しかし多くの経済学者は、GDP神話を変える気はないでしょう。GDPへの信仰は一種のイデオロギーだから、簡単に変わらないのです。経済統計という点でいえば、旧ソビエトでは、サービス業を入れない独自の統計を使っていました。旧ソビエトの統計方法を使って今の日本の経済状態を測り直したら、そのほうが実体に近いかもしれません。 ところで、GDP神話の崩壊が明確に理解できるようになるのは、戦争が起きたときです。
たとえば、2024年2月、世界のGDPにおける順位において日本は3位から、ドイツに追い越されて4位に落ちたということが大きな話題になりました。 2024年2月15日の読売新聞には、「内閣府が発表した2023年の名目国内総生産(GDP)は591兆4820億円だった。ドル換算すると、4兆2106億ドルとなり、ドイツよりも2400億ドル少なく、世界4位に転落した」という内容の記事が書かれており、多くのジャーナリストはこのニュースを日本経済の凋落というニュアンスで捉えました。
しかしドイツは、ウクライナ紛争の影響で、ロシアからパイプラインで送られてきていた天然ガスの供給がストップしたため、エネルギー価格が約4倍に高騰し、GDPに大きく反映されてしまっているのです。こういう点に関しては正しく報道されず、日本のGDPの順位が下がった点だけがクローズアップされて語られているのが真相です。 さらに、円安が起きています。そのため日本の経済力をドル換算のGDPだけで見れば、どうしても下降している数字が出てきてしまいます。