〈解説〉月に「洞窟」を発見、なぜ重要で、実際にどう役に立つのか研究者に聞いてみた
どうやって洞窟を見つけたのか
現在の月は、静寂に包まれた銀色の砂漠だ。だが、かつては火山が盛んに活動していた。噴き上げられた溶岩が、ガラス質の粒(火山涙)となって地表に降り注ぎ、巨大な溶岩の海を形成していった。 今では月の熱の多くは失われ、火山活動は終わり、凹凸のあるさまざまな地形が残された。そうした地形の1つとして、溶岩チューブや洞窟、トンネル状の空洞は、月のあちこちに、とりわけ月面の「海」(古代の火山活動で噴出してできた黒っぽい玄武岩の一帯)に存在すると長く考えられてきた。 今回、月の上空を飛行するNASAの月探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)のカメラが捉えたのは縦穴のみだった。しかし、LROには小型レーダーシステムが搭載されており、的確な角度で縦穴にレーダーを照射していれば、穴の奥深くまで探索できたかもしれない。 カレル氏は他の研究者と共同で既存のデータを詳しく調べ、「静かの海」にある1つの縦穴に注目した。静かの海は1969年にアポロ11号が着陸した地点で、溶岩が固まってできた場所だ。 データからは、この縦穴の深さ135メートルから175メートルのところから、深い洞窟が少なくとも1つは伸びていることが分かった。 科学的な見地から言えば、こうした空洞の探査は貴重な発見につながる。 「洞窟は月の歴史を今に残す特別な環境です」と、トレント大学の研究者で、論文の最終著者であるロレンツォ・ブルツォーネ氏は説明する。洞窟の1つを探査すれば、月面の火山活動をはじめ、謎の多い内部組成まで多くの謎が解明されるかもしれない。 今回の溶岩チューブは月で発見された最初の地下洞窟トンネルであり、未発見のものがまだ無数にあるという説も補強する。 「月には、流出した溶岩によって形成された洞窟がおそらく数百から数千は存在していると思います」とグレッグ氏は言う。そしていつの日か、そうした洞窟が宇宙飛行士の命を救うかもしれない。