40代男性記者がVTuberやってみた 現役VTuberから学んだ「なりたい自分になれる」魅力
いよいよ初配信スタート。誰か聞いてくれるだろうか──。スマホの画面では、かわいらしい女性のアバターが雑談している体にはなっている。部屋で一人、女性の声で流れる自身の雑談を無言で聞くという奇妙な状況。居心地の悪さを覚えたが、配信を始めて数十秒後、リスナーが入ってきた。 〈こんにちは〉 男性とおぼしきリスナーからのコメントが画面に表示される。たった5文字の挨拶だが、まったく知らないどこかの誰かとつながれたという喜びを感じた。ただ、録音を流しているだけなので挨拶は返せない。苦渋の思いで押し黙っていると、続いてコメントが寄せられた。 〈女性の方ですか? 女性ならお友達になりませんか〉 悲しきかな、VTuber界隈では「あるある」という、男女の出会い目的のコメントだった。その後、新たにリスナーが来ることはなかった……。 ■意外にも才能あり? しかし、録音データを流すだけを配信と言えるのか。リアルタイムでのコミュニケーションがVTuberの醍醐味ではないか。女性アバターではあるが、自分の地声で、生で話すと決めた。が、はたしてこれが正解なのかどうか。VTuberになるためのオンラインスクール、JOYミュージックスクール代表の松舘香代子さんに聞いた。 「実際には自身と同じ性別のキャラクターを選ばれる方が多いですが、男性が女性の姿、声に憧れて配信して自己実現したいという方もいますし、その逆もいます。そのどちらでもなく、美少女のキャラクターの姿で男性の声で話すというギャップで人気のVTuberもいますし、正解というものはないと思います。人を惹きつける魅力があれば通るという世界なんです」 一つ悩みは解決した。実際に地声で配信してみる。ひとまず記者の趣味であるバスケについて10分ほど雑談してみた。まだ画面に向かって一人でしゃべるという行為には羞恥心が残るが、生配信は待ってはくれない。「間」ができてしまうのが怖く、脳はフル回転で次の話題を探し、配信を切るころには疲労感があった。ちなみにリスナーは最後までいなかった。