内藤礼の作品に民藝の心を感じるホテル。富山・砺波平野で民藝の心を感じる旅へ。
〈楽土庵〉
富山県砺波市野村島645 TEL 0763 77 3315。 全3室、1泊2食付き2名利用 お一人 44,000円~。TEL 0763 77 3999。※内藤礼《返礼》は公式サイトから予約をすれば宿泊しなくても鑑賞できる。公式サイト
2024年4月には〈城端別院善徳寺〉の敷地内に宿泊を軸とした複合施設〈善徳寺 杜人舎〉(もりとしゃ)もオープンした。全6室の客室のほかに講堂、カフェ、ショップ、テレワークスペースを備えている。建物は柳宗悦の愛弟子、安川慶一が設計した研修道場だったもの。〈楽土庵〉同様、こちらも客室を含め、随所に民藝品が置かれている。
柳宗悦研究者の松井健は「民藝は宗教だ」という。柳は「法門」という語によって、人類が普遍的に感得している宗教性を伝えたいと考えていた。柳が滞在した〈城端別院善徳寺〉は、北陸における浄土真宗信仰の中心的な寺院の一つだ。
蓮如上人を開基とする浄土真宗では「他力」という考え方が重視される。ちっぽけな「凡夫(ぼんぶ)」である私たちは、目には見えない大いなる力=他力に身を委ねるほかない。そのことを思えば自然にありがたい、おかげさまで、という気持ちがわいてくるし、利他の心で他者に接することができる。
善徳寺から車で20分ほどのところにある浄土真宗寺院〈躅飛山 光徳寺〉(ちょくひざん こうとくじ)には内外にところ狭しと民藝の品が置かれている。いくつもある部屋には棟方志功の襖絵《華厳松》を始め、世界各国の民藝が並ぶ。おもに先先代・先代の住職が収集したものだという。
あるとき、光徳寺を訪れた人が「なぜここはこんなに居心地がいいのですか」と尋ねた。先代の住職は「自我を離れたところで作られたものたちは、われが、われがと自己主張しないからでしょう」と答えたという。民藝運動の中心人物の一人、河井寛次郎は「仕事が仕事をする」と言った。自我を離れることで自己を解放することができるのだ。自我主張をしない姿勢はおのずと「他力」、「利他」につながる。民藝と浄土真宗がここで出合う。