【下山進=2050年のメディア第43回】週刊ダイヤモンド書店売り廃止の衝撃!サブスク特化へ
日経電子版の創刊は2010年3月だが、それまでは無料広告モデルのNIKKEI NETで日経の記事の一部はただで読めた。 日本経済新聞は、有料電子版を始めるにあたって、このNIKKEI NETをドメインごと閉じている。こう書くと簡単なことのように聞こえるが、当時、NIKKEI NETの売上は50億円はあった。 日経電子版のローンチをきめた臨時取締役会は2007年春に開かれたが、この席上では、当然のことながら、「50億円の売上を捨てるのか」という反対論が噴出した。有料電子版の市場は、先行している他の新聞社がいないのだから、その段階ではゼロだ。 通常の会社はここで尻込みをしてしまう。かつてイノベーションで成功した市場があると、その市場が陳腐化することがわかっていても、新しい技術革新で生まれようとしている市場に既存の大手企業は出て行けない。これを「イノベーションのジレンマ」という。 日経はあの時、「イノベーションのジレンマ」を破ってNIKKEI NETを捨てて、有料電子版という新しい市場に出ていったからこそ、日本の新聞社で唯一現在も、持続可能となっている。 同じように、2025年4月から、既存の市場を捨てて、サブスクという市場に特化していこうとする週刊誌がある。 以前も2週にわたってとりあげた週刊ダイヤモンドである。 週刊ダイヤモンドは、4月から書店売りをやめ、定期購読とデジタル有料購読の「ダイヤモンド・プレミアム」のサブスクに特化する。 ■8億円に近い売上を捨てることになるが 日本の週刊誌は、みな厳しい。週刊文春を含めてほぼ全ての週刊誌が部数減にあえいでいる。その中で、デジタル有料購読でV字回復をとげているのが、週刊ダイヤモンドだ。 週刊ダイヤモンドのデジタル有料版「ダイヤモンド・プレミアム」は、2019年6月にスタートした。デジタル有料購読を始める前の週刊ダイヤモンドのABC部数は2019年上半期で6万6424部まで落ち込んでいた。 それが最新の2024年上半期では9万1782まで回復している。このうち有料デジタルの購読者数は4万3049。この連載で以前紹介した2022年下半期の「ダイヤモンド・プレミアム」の契約者数は2万9654だったから1万3000上乗せしたことになる。 前回その成功の秘訣を、無料広告モデルのダイヤモンド・オンラインの編集部を週刊ダイヤモンド編集部と統合しただけでなく、紙の定期購読と有料デジタルのサブスクの販売のレポートラインを当時の局長の麻生祐司の差配に一本化したことにあると書いた。