東京都立高校の4分の1が定員割れ。授業料の実質無償化で私立or都立のどちらを選ぶべき?
東京の私立高校の人気は高まっているが、強い危機感
私立高校の動きも見てみましょう。東京都内の私立高校入試での歩留まり率(合格者の何%が入学したか)は、都立志向率の低下に呼応して上昇しています。両数値の10年間の相関係数は-0.93と極めて強い負の相関があり、私立高校の人気が高まっていることがわかります。 私立高校関係者に話を伺うと、2030年頃から迎える都内公立中学3年生の急速な減少に、強い危機感を抱いています。人気が高い私立高校の校長先生方も安穏としてはいません。教育の個性化や充実化を次々と、しかも急速に進めています。 例として、ダブルディプロマ(日本と海外の2つの高校卒業資格が得られる)コースを設ける、1年間の留学を必須にする、STEAM教育に力を入れる、理科は毎時間実験・観察を取り入れる、PBL型授業をメインとする、プログラミングやデータサイエンスを深く学べる、他教科を英語で学ぶイマージョン教育を取り入れる、探究活動に力を入れる、といった多様な取り組みが進められています。
まとめ|保護者のすべきこと
教育の成果とはすべてが一朝一夕に現れるものではありません。高校に入学する生徒が卒業する3年後、中高一貫校に入学した生徒が卒業する6年後に、どのように成長させて大学に送り出せるか、毎年毎年の卒業生一人ひとりが学校の評判につながっていくと思います。 子どもの現在の学年によっては、中3生が増加して厳しい入試になることになりますし、小学校入学前の子どもがいる家庭では、急速な少子化の中で統廃合する学校も出てくるでしょう。しかし、入試自体はおおむね緩和されるでしょう。 とはいえ、入りやすいからといって「どんな高校でもよい」というわけにはいきません。子どもが生き生きと高校生活を過ごせるように、子どもと学校とのマッチングがますます重要になってきます。一昔前のように「どこの高校に入学しても学ぶことはほとんど同じで、偏差値が違うだけ」ではなくなってきており、その傾向はますます強まるでしょう。 ですから、「わが子に合った高校を選ぶこと」がますます重要になります。入試制度も変わっていきますし、現時点でも東京都は新たな検討を進めていますので、保護者は入試変更に関するニュースには敏感になっておくことをお勧めします。 近年、特に私立の場合、学校見学会や説明会を受験学年限定としている学校は極めて少なくなりました。今、学校ではどのようなことが行われているのかを、実際に学校に足を運んで何校も見学することを強くお勧めします。今学んでいる生徒たちが、未来の学校の評判をつくるのです。在籍している生徒たちの学びに向かう姿勢や学びの内容を見ておくと、数多くの気づきが得られます。 「高校受験なんてまだ先のことだから、もっと後でよい」と考えず、まず都立と私立それぞれ1校からでも見学してみてはいかがでしょうか。
寺田拓司