東京都立高校の4分の1が定員割れ。授業料の実質無償化で私立or都立のどちらを選ぶべき?
東京都は所得制限の見直し発表のタイミングも影響
東京都は「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」における所得制限を2024年度から撤廃しました。2023年度まであった「世帯年収910万円の所得制限※」がなくなったことで、2024年度からすべての都内在住者に高校授業料が助成されることになります。2024年度は「国の就学支援金と都の授業料軽減助成金を合わせた48万4,000円までの授業料(年間)」が助成され、48万4,000円を超える場合は差額を生徒側が負担します(ただし、授業料のほかにも様々な費用がかかります)。 ※公益財団法人 東京都私学財団 この制度は、都内在住者であれば、都外の私立高校にも適用されます。例えば、神奈川県にある慶應義塾高校の年間授業料は77万円ですが、都内在住の生徒の場合、年間授業料は差額の28万6,000円になります。もし子どもが通う高校が都内にあったとしても、埼玉県、千葉県、神奈川県などに在住の生徒であれば、都の「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」の対象とはなりません。上記3県にも支援制度はありますが、対象は自県に所在する私立高校なのです。 共働き家庭が増えた現在では、「世帯年収910万円の所得制限」の撤廃で新たに助成対象となる家庭は決して少なくありません。それにもかかわらず、東京都の「私立シフト」が大阪府ほど劇的に進まなかったのは、「発表の時期」も影響したのではないかと考えています。 高校授業料を完全無償化する素案を大阪府が発表したのは2023年8月でした。高校受験生にとっては、夏休みや秋の学校説明会で受験校を検討する時間的な余裕がありました。それに対して、東京都知事が次年度からの所得制限撤廃を記者会見で発表したのは2023年12月5日でした。この時期では、担任の先生と生徒・保護者による三者面談がすでに終了し、受験校や志望順位が決定していた中学生は少なくなかったと思われます。この点も、大阪府よりも私立志向が急激に進まなかった原因のひとつと考えています。