「大岡越前」キャストとの豪華ゴルフコンペも 里見浩太朗が明かす「水戸黄門」秘話…「撮影の合間にご老公や弥七と将棋のトーナメントをしていましたね」
東野さんのセリフが出てこない!
《そんなアットホームな黄門様ご一行にも、やがて試練の時が訪れる》 80年の第11部くらいからでしょうか。70代半ば近くなった東野さんが何回もNGを出すようになった。セリフの覚えも悪くなり、1行は大丈夫だが、2行になるともうダメでした。多い時で「カットN」まで、つまりカットA、B、Cと増えていきますから14回NGが出たこともありました。東野さんも一生懸命セリフを言おうとするが、出てこない。最後のほうは、1行分だけ東野さんが言って、残りは助さん格さんに割り振るようになりました。 ほかにも、こんなことがあった。ある人物を家に訪ねると、娘が「父は今、出かけております」と言う。待たせてもらっているところに件(くだん)の人物が帰ってくる。すると、黄門様が父親のほうを見て「お留守にお邪魔しております」と言うのが普通なんですが、どうしても娘に向かって「お留守にお邪魔を」と言っちゃうんです。僕らが「ご隠居、帰って来た人を見ないと」と言うと、東野さんは「うんうん」と頷くのですが、用意スタートとなると、娘に向いて言ってしまう。
カンペに頼らない東野さんのプライド
それから、風車の弥七が天井からご老公の前に降りて来るシーンが、よくありますよね。実際飛び降りる人は吹き替えで、着地のところだけ中谷さんがポンと飛び上がってシーンを繋げるんですが、中谷さんが飛ぶと東野さんも真似してポンと飛び跳ねてしまうんですよ。「ここでは弥七だけが飛ぶんですよ」と言うと「ああ、そうかそうか」と言うんだけれども、用意スタートとなると、またポンと飛んじゃう。 年取った俳優さんが、火鉢にカンニング・ペーパーを埋めておく、そんなことはよくあることです。三木のり平さんなどは最初からセリフを覚えず、手拭 いなど、あちこちにセリフを書いておいて芝居をする人でした。 でも、東野さんには、そういうことはしたくないというプライドがあったんでしょう。そういう意味では、カンペに頼っている今のタレントは、役者根性が無さ過ぎますね。 *** 「人生楽ありゃ苦もあるさ」は撮影現場にも当てはまっていたようだ。第2回【3代目ご老公からは「あり得ない」と言われ…里見浩太朗が明かす「水戸黄門」の舞台裏 新シーズンの第1話に“火事”のシーンが登場する理由】では、昼間は助さん、夜は長七郎を演じた多忙な毎日、実は不仲だった黄門ファミリーもいたことについて語っている。
デイリー新潮編集部
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