初代ダックスホンダの秘技「前輪分離機構」を使って、実際クルマのトランクへ積んでみた!
ダックスホンダ初採用の「フロント分離機構」とは?
ダックスホンダに採用された斬新なアイデアのひとつに前輪分離機構がある。バイクを四輪車に積載して運び、目的地で降ろして乗るという遊び方は、1960年代の主要輸出国だったアメリカを意識した発想だろう。 しかし当時の日本では5ナンバー以下の小型車が多かったため、積載を可能とするためにフロントまわりを簡単に外せるように……というアイデアとしてこの機構が生まれたのだろう。以下では、実際に試してみたフロントの分離作業の手順を紹介しよう。 ■トランクへの収納作業の様子:バイクの前輪の分離作業はさほど手間取らないものの、大変なのはバイクをトランクへ持ち上げることだった。四輪のボディを傷つけないように注意しバイクを収納するのは、軽いバイクとはいえ一人では重く、かなり困難。最低2名の力が必要だった。撮影はホンダファンのご厚意により、同時代のホンダ1300(四輪車)をお借りして取材をさせていただいた。 ■当時作成された四輪車への積み込み方法の冊子 ・「2.5分で分離できます」と書かれた作業手順のページ ・当時の四輪車、ホンダ1300とコロナ・マークⅡ(トヨタ)への積込みの様子 ・当時の主要四輪車の積込み可/不可リスト。積載用カバーも販売 ■実際の分離作業手順の写真 1.まずはシートを跳ね上げ、タンクキャップの空気抜きのツマミを「OFF」位置にして密閉。バッテリーも外す。 2.キャブレターに付く燃料コックをOFFにし、ドレンを開けてガソリンを排出。燃料を垂れ流すことになるという、現在では考えられない手法だ。 3.スロットルワイヤーの黒いカバーを前にずらし、樹脂製のケースを開けてタイコを外してワイヤーを分離する。 4.メインハーネスをネック部のカプラーで分離する。カプラーはヘッドライトステーの裏側にクランプされている。 5.ハンドルを折りたたむ際は、トップブリッジの浅い溝に突起を差し込んで仮固定。その後、写真の「くるくる」レバーを緩めていく。 6.これでフロントまわりが分離できる。「くるくる」レバーはトップブリッジの切り欠き付きの溝にハマる構造になっている。 以上のように、前輪分離機構を使った分離作業は意外としやすかったものの、難点は普通車のトランクまで持ち上げて収納することだった。車体の重さもさることながら、四輪もバイク本体も傷つけずに収納するのがかなり面倒だったのだ。 そんな事情もあるのだろう、この前輪分離機構はしばらくスタンダード仕様とエクスポートに残されたものの、後年登場するダックスの新型や派生モデルへは採用されなくなっていった。 文●神山雅道/高垣亮輔 写真●岡 拓 まとめ●モーサイ編集部・阪本 *本記事は、八重洲出版『MCクラシックNo.6』(2018年8月号)特集「1970~80年代を彩った国産レジャーバイク」の一部を再構成したものです。