「御社と貴社」「当社と弊社」の違いって?会社を指す敬語の使い分け方
シーン別「御社」と「貴社」の使い分けと文例
ここでは口語と文語の使い分けに則って、「御社」と「貴社」のビジネスシーンや転職活動での使用例をご紹介します。なお、「御社」「貴社」は単独で敬語になるため、「御社様」「貴社様」などさらに “様”をつけてはいけません。 ◇「御社」の使い方例 電話で話すとき ・御社に着いたら、どなたを訪ねればよろしいですか? ・承知いたしました。それでは、○月○日の〇時に御社にうかがいます。 ・本日、御社の○○様から書類一式をいただきました。 転職の面接で受け答えをするとき ・(自己PR)御社の既存顧客の満足度向上に、ぜひ貢献したいと考えております。 ・(逆質問)御社の計画の中で、特に伸張を期待されている分野は何でしょうか? ◇「貴社」の使い方例 取引先へのメール ・お打ち合わせの件につきまして、下記のいずれかの日程で貴社におうかがいできればと存じます。 ・ご提案いただいた価格に納得いたしました。貴社との今後の円滑な取引を心より願っております。 転職の応募企業へのメール ・本日○○様のお話をおうかがいし、貴社の一員として貢献したい気持ちが一層強くなりました。 ・面接日に有休取得の調整を行いますので、○日以降で貴社のご都合の良い日時を教えてください。 転職の応募書類 ・(志望動機)常に業界をリードする貴社の先見性に魅力を感じております。 ・(本人希望記入欄)貴社の規定に従います。
「御社」「貴社」の使い方を間違えたときの対処法
上述したように「御社」「貴社」の使い分けルールは決して厳密なものではありません。どちらも相手を敬う表現なので、メールに「御社」と書いたり、会話で「貴社」と言ってしまったりしても、わざわざ訂正する必要はありません。転職活動など使い分けた方がよい場面で間違いに気づいたときは、次から話すときに「御社」、書くときに「貴社」とするよう気をつければいいでしょう。
「弊社」と「当社」の違いと使い分けは?
「御社」や「貴社」は相手の会社を指すのに対して「弊社」や「当社」は自分の会社を指す言葉です。これらのニュアンスの違いと、使い方について解説しましょう。 ◇「弊社」は謙譲語、「当社」には敬語的要素はない 「弊社」と「当社」は「自分の会社」という意味で、話し言葉・書き言葉の両方で使います。 「弊社」は自身がへりくだることで、相手を立てて接する「謙譲語Ⅱ(丁重語)」に分類されます。一方「当社」も改まった言い回しですが、特に敬語の意味合いはないフラットな言葉です。 「弊社」と「当社」は一般的に、次のように使い分けられています。 弊社(へいしゃ)……自分の会社と取引関係のある社外の相手(取引先企業や顧客)に対して使う 当社(とうしゃ)……社内向けに使うほか、社外の対等な立場の相手や、不特定多数に対して使う つまり、BtoBの関係である他社や、お客さまに対しては「弊社」、社内での会議や社内文書、企業ホームページなどで自社の特徴や考え方を述べる場合など、相手にへりくだる必要のない場面では「当社」を使います。 なお企業のホームページでも、伝える対象によって、下記のように「弊社」と「当社」を使い分けることもあります。 「各種施工のご依頼は弊社にお任せください」……「お客さま」と「お客さま予備軍」を対象にしているというニュアンスで「弊社」を使用。 「当社では個人情報の入力をお願いする電子メールをお送りしておりません」……不特定多数に対する告知というニュアンスで「当社」を使用。 ◇自分の会社を指すその他の言葉について 「自分の会社」を意味する表現には、ほかにも「小社」「我が社」「自社」などがあります。それぞれのニュアンスの違いについて知っておきましょう。 小社(しょうしゃ)……「弊社」と同じ「謙譲語Ⅱ(丁重語)」。「私どもは本当に小さな会社です」といったニュアンスで、謙遜して相手を立てる表現。単に「小さな会社」の意味もあり、「商社」と読みが同じで紛らわしいため、使われる頻度はあまり高くありません。 我が社(わがしゃ)……「当社」と同じく敬語の意味を含まず、基本的には社内向けに使用。「私たち」というニュアンスが強く、社員の連帯感を促す意図で使われることが多い言葉です。 自社(じしゃ)……文字通り「自分の会社」のことで、「当社」よりもくだけた表現。社内の日常的な会話で「自社の強みは…」などと使うほか、「自社株」「自社製品」「自社開発」などのように、名詞と組み合わせて使うことが一般的です。 ◇転職活動では「弊社」「当社」は使わない ビジネスシーンでは自分の会社を「弊社」「当社」と呼ぶのが一般的ですが、転職活動の応募書類や面接においては、在籍中の会社なら「現職」「現在の勤め先」、すでに退職した会社なら「前職」「前の勤め先」と呼ぶのがふさわしいでしょう。 なぜなら、「弊社」や「当社」という言葉には「自分が会社を代表してここにいる」という意味合いがあるからです。転職活動は会社の代表としてではなく、あなたが個人として行っていることなので、それには当たりません。面接で「弊社」「当社」を繰り返せば、「今の会社にそれほど愛着があるのなら、なぜうちの会社を受けるのだろう」などと受け取られかねないので気をつけましょう。