1万5000人の中から見つけた“8年前に涙していた女性” 悲願のJ1初昇格…地元TV局が起こした奇跡【インタビュー】
「小学生の頃からともに歩み、ともに成長し、ずっと応援してきたクラブ」
「8年前は、まず準決勝の松本戦は『遠くて行けない』と父親から言われて泣く泣く参戦を諦めていたのですが、試合日の3日ぐらい前に父親がサプライズでチケットなど、すべて手配してくれて足を運ぶことができました。その時は終盤の劇的ゴールで、人生で初めて腰が抜けて、その場に座り込んでしまいました。帰りのバスまでの道中も相変わらずのボロ泣き具合で、すれ違う人に心配されるほどでした(笑)」 「決勝はたぶん今ほどなにも考えておらず、真っ向からぶつかってやろうみたいな勢いに身を任せた状態で挑みました。セレッソ相手に歯が立たず、寒い中、雨にも打たれて、涙が止まりませんでした。でも、泣きながらでも、視界がぐちゃぐちゃになりながらでも、最後まで昇格のために戦ってくれた選手たちの勇姿をこの目にしっかり焼き付けたいという思いで、挨拶に来てくださった選手たちを泣きながら見つめることしかできませんでした。悔しいという言葉だけじゃ言い表せられなかったです」 涙に暮れた2016年から8年の時を経て、ようやく念願が叶う日がやってきた。本拠地で行われたベガルタ仙台との決勝は前半20分にMF末吉塁のゴールで先制に成功。後半16分には途中出場のFWルカオの突破から最後はMF本山遥が決めて2点差に広げた。堅い守備でこのリードを最後まで守り抜き、ホームのサポーターたちの前でクラブ史上初の昇格を決めた。 本拠地のスタンドで、ずっと応援してきたクラブの悲願の瞬間を見届けることのできた「もえ」さんは、率直な胸の内をこう明かす。「小学生の頃からともに歩み、ともに成長し、ずっと応援してきたクラブがついに初のJ1昇格を達成して、本当に嬉しい気持ちしかないです。ただ、いざ昇格を達成してみると、夢を追い続ける期間が長過ぎたせいか、あまり実感が湧かず、今でも夢を見ているような気分です」。J2に参入した2009年から実に16年目の悲願成就。“夢見心地”というのもサポーターにとって正直な思いだろう。 地元テレビ局によって注目を浴びた1人の岡山サポーターの熱い思い。「本当に素敵なお仕事をしてくださったと思います。そのお仕事を通じて、いろいろな方に今回の一件が伝わったこと、すべてがクルーの方のおかげだと思っているので感謝の気持ちでいっぱいです!」と「もえ」さんは語る。8年越しの悲願。こんな熱いサポーターの思いを乗せて、ファジアーノ岡山は来季、初めてJ1の舞台に挑む。
福谷佑介 / Yusuke Fukutani