JR北海道ローカル線廃線の動き 「提言書」には何が書かれているか
安全対策が後回しに
JR北海道の経営環境は悪化の一途をたどった。国鉄がJRに移行する際、JR北海道は経営安定基金の運用益で経営を安定させようとしたものの、低金利時代が長引き、それが安全への投資を削減することにつながっていった。 こうした経営環境について提言書は、現在のJR北海道では人命を失いかねない事故が複数起こっていることに加え、安全にかかわるデータの改ざんが行われていることに触れ、JR北海道の幹部は安全のために資金や人材を投入すべきであったが、収支上の数字合わせに終始したと指摘している。 また、「身の丈以上のスピードアップへの投資やイベント列車など総花的で全方位に対して『よい顔』をする華のある施策を進めるあまり、老朽・劣化の進行する設備の修繕・更新、人材の育成など地道な安全対策が後回しになった」とする。
経営改革を断固推進
6月29日、政府はJR北海道に対し1200億円の追加支援を決定。これを受けて、同社は社長らの役員報酬を削減した。北海道では人口が減少し、札幌への人口集中が進んでおり、札幌圏以外での利用者が減っている。 提言書は「明らかに鉄道特性(大量輸送を前提とした交通手段であること)を発揮できない線区をJR北海道の責任で維持させることは、結果として札幌圏や都市間輸送で得た収入が利用の少ない線区の維持に振り向けられる」ことになると指摘。「『選択と集中』に基づき鉄道事業の運営を行う厳しい経営判断を自ら下していくことが求められる」とした。 まずは安全を再優先にするように経営幹部に意識改革を求め、安全を再優先に投資し、修繕を進めていくことをさらに求めているが、この議論では広大で、かつ過疎地の多い北海道の総合交通体系をどうつくって行くかもポイントとなる。 提言書はいう。「JR北海道に残された時間は短い。破綻した北海道拓殖銀行の二の舞にならないため、『最後は国が救済してくれる』と甘く考えず、限られた時間の中で経営改革を断固進めなければならない」と。 (ライター・小林拓矢)