引退か再起か…歴史的激闘の末に2団体統一に失敗した井岡一翔に突き付けられた厳しい選択肢「人生の戦いはまだまだ終わらない」
元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏は「1ラウンドにボディを効かせたが、2ラウンド以降は、それを読まれて警戒されてしまった。ボディ以外のパンチは効いていなかった。いいパンチを当てても、3発、4発と返してきた。パワーもあり攻撃も多彩。井岡の完敗だった」と分析した。米国人のフルマーク判定は、米メディアの中で「恥ずべき採点だ」「物議を醸す」と批判されたが、内山氏の採点も「120―108」だった。 井岡も、あえて外からのフックを打つなど攻撃に変化を加え、6ラウンドには右のボディをみぞおちに打ち込んだ。だが、マルティネスの勢いは止まらない。 傷だらけだが、腫れはない顔でインタビュースペースにきた井岡が言う。 「パンチは効かなかったが、バランスの崩れるようなパワーはあった。同じ階級の選手じゃないような体の厚みがあり、ガードも固かった。でかいサンドバックを叩いているような感じだった」 序盤に打ち続けたボディが、ジワジワとダメージを与え、後半にマルティネスを失速させるはずだった。 「セコンドにも手応えがあり、削れているなという認識で進めていた」 だが、マルティネスは時には足を使い、体力の回復をはかりながら、したたかにラウンドをマネージメントしてきた。最後まで失速しなかったのが誤算だった。マルティネスに流れるポイントを食い止めることはできなかった。 試合前にイスマエル・サラストレーナーは「この試合は年間最高試合になるだろう」と予測していた。35戦を戦ってきた井岡のボクシング史に残る激しい殴り合いとなったが、終盤の勝負に山場を作ることができず、ベルギー人のジャッジがつけたように最大でも4ラウンドのポイントを取るのが精いっぱいだった。 気になるのは、35歳の井岡の今後の進退だ。 すべてを出し切って敗れたのであれば、それは「限界」の2文字に置き換えられる。 「今はそこまでを落とし込んで考えられない。客観的にも考えられない。すべてをこの日にかけて結果が出なかった悔しさがある。時間と共に受け入れ、この先の人生をどう戦っていくかを考えていかないといけない。バランスを考えて今後を考えたいが、今はゆっくりしたい」 進退についての明言は避けた。 「タイトルも持っていない。考えていたこともまったく白紙になった」 白紙になったのは、ずっと目標にしていたファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を破り、WBCの新王者となったジェシー“バム”ロドリゲス(米国)との3団体統一戦のプランだ。
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