オバマ政権の行方は? どうなる米中間選挙 /上智大学教授・前嶋和弘
11月4日にアメリカの中間選挙が行われます。オバマ政権への逆風の中、上院で民主党が過半数を維持できるかが最大の焦点となっています。まず、そもそも中間選挙とは何なのか説明した後で、今回の中間選挙の注目点、そして選挙の結果がどのようなものになるのか、考えてみます。 【写真】「イスラム国」対応で苦悩するアメリカ 本格介入はあるのか
アメリカ中間選挙とは?
もしかしたら「中間」という言葉が誤解を生むかもしれませんが、中間選挙は非常に大がかりなものです。アメリカの連邦議会は解散がないため、2年に1度の「選挙年」を定期的に設けています。その「選挙年」が今年です。 任期2年の下院は435議席全員改選、任期6年の上院は100議席のうち3分の1となる議席が改選となり、今回は改選対象ではない議員の引退などもあったので36議席が争われます。連邦議会選挙のほか、同日に行われる州知事選も今年は50州の中の36州で行われます。市長選(ワシントン市など)もあります。 大統領(任期4年)の選挙と重なっていないので、日本では注目度がどうしても低くなっていますが、中間選挙もアメリカ政治の方向性を大きく変える一大イベントです。
“苦悩するオバマ”の原因に
たとえば、連邦議会の上下両院の一方でも多数派党が変われば、議事運営は大きく変わることがあります。最近の例でいえば、4年前の2010年中間選挙で共和党が下院の多数派を奪還した影響は非常に大きなものでした。 2010年選挙の前の2年間はオバマ政権にとっては、絶頂期でした。民主党は上下両院いずれも多数派を占めていたため、オバマ政権と連動する形で、大型景気刺激策(2009年2月成立)、医療保険改革=オバマケア(2010年3月成立)、金融規制改革法案(2010年7月成立)と次々に革新的な法案を立法化させていきました。いずれもオバマの2008年大統領選の公約であり、オバマ政権の最初の2年間が輝いていたように見えた理由の大きなものはこの3つの立法でした。 しかし、この3つの立法は規制強化や財政支出を伴うリベラル派寄りの政策であったため、財政保守派は「大きな政府だ」と強く反発します。これがティーパーティ運動を生みだします。この保守派の反撃で、上下院で共和党は大躍進し、特に下院では1948年(民主党75議席増)以来、最大の63議席増を記録しました。 この選挙で下院の多数派党が民主党から共和党にかわります。それまでは大統領と議会の上下両院の多数派の3つがいずれも民主党でしたが、2010年選挙でその一角が崩れて、今日に至ります。これ以降、移民法改革や最低賃金引き上げなど、オバマ政権が推進する政策に関連する立法はことごとく下院の共和党側の反対でブロックされるようになり、重要なものはほとんど成立していません。最初の2年では輝いていたように見えたオバマ政権はどんどん色あせていきます。 国内政治でほとんど何もできないままの状態は今でも続いています。2012年大統領選挙では、コアの支持層のリベラル派を固めて何とか勝利しましたが、ここ1年ちょっとの間で、シリア、ウクライナ、「イスラム国」と様々な外交上問題が重なっていきます。ここ数年のオバマ大統領についての報道には日本でもアメリカのメディアでも、苦悩の表情の写真が非常に多いのですが、“苦悩するオバマ”の原因を作ったのは2010年中間選挙だったといえます。のちの歴史家は、「2010年中間選挙でオバマ政権は異例の早期レームダックに入った」と分析するかもしれません。