オバマ政権の行方は? どうなる米中間選挙 /上智大学教授・前嶋和弘
最大の争点は「オバマ」
今回の中間選挙の各種予測をみると、オバマ政権にとってはさらなる打撃になると考えられています。共和党は下院での多数派を維持するだけでなく、上院でも共和党が議席を伸ばすとみられています。上院では2006年中間選挙以来、民主党にとられていた多数派を共和党が奪還する勢いです。 そもそも中間選挙にはいくつかの法則があります。その中でも最も有名なのが、「大統領の政党はかなりの確率で議席を失う」というものです。過去40年間を振り返っても、大統領の政党が中間選挙で議席を増やしたのは、テロ戦争の最中(2002年)やドットコムバブルの中の好景気(1998年)など、という例外中の例外です。 大統領の支持率は自分自身の選挙がピークであり、中間選挙あたりが最低状態になります。特に、オバマ大統領は2期目であるため、大統領や大統領の政党に幻滅してしまう「6年目の浮気(six-year itch)」という離反現象があります。特に、上院では、6年前の大統領選挙の年にオバマ大統領の人気に乗っかる形で当選した議員が任期6年を終え再選を迎えるので、民主党候補は余計に不利です。 移民法改革や最低賃金引き上げなど、中間選挙の争点の多くが前述のように共和党の反対で停滞しているため、民主党候補者の陣営としては、ここを突くべきなのですが、エボラ出血熱をめぐる国内対応やイスラム国をめぐる外交情勢など、オバマ政権のリーダーシップに対する国民の疑問も大きくなっています。失業率は少しずつ低下していますが、景気回復を国民の多くが実感できていないため、経済も大きな争点になってはいません。消去法から「中間選挙の最大の争点はオバマ」という状況になっています。 実際、上院選挙では、かつてはオバマ人気に乗っかった民主党候補が一気にオバマたたきを続けています。そのうちの一人、ルイジアナ州のランドリュー候補は「オバマ政権のエネルギー政策は間違っている」と連日オバマを非難しています。また、新人ですが、ケンタッキー州のグライムス候補は「私はオバマとは違う」ことを選挙CMで取り上げ、“身内たたき”に専心しています。全くの迷走状態といっても過言ではないでしょう。