複数用途の不動産でリスク分散 複合型・総合型J-REITの特徴と展望
用途別に(オフィス、住居、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設)J-REITのそれぞれの特徴と展望について紹介しました。最終回は、複数の用途に投資する「複合型・総合型」のJ-REITについて、それぞれの現状と展望について、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティングの田渕直也さんが解説します。
複数の用途に投資をする複合型、総合型
今回は、タイプ別J-REITの最後として、複合型・総合型と呼ばれるものを見ていきます。いずれも、今までご紹介してきた様々な用途別不動産のいくつかを組み合わせて投資対象とするものです。厳密にいうと、2つの用途に投資をするものを複合型、3つ以上に投資するものを総合型といいますが、ここでは気にせずにひとまとめにしてお話ししたいと思います。 複合型・総合型は、J-REITのタイプ別の内訳では最も銘柄数が多く、また時価訴額や売買高が大きい代表的なJ-REIT銘柄もいくつか含まれています。 複合型・総合型の大きな特徴は、複数の用途の不動産を組み合わせることで、1つのリートの中でリスク分散が図られるという点です。たとえば、オフィスビルは景気敏感型で、住居は景気に左右されない安定型というのは今まで見てきたとおりですが、この2つに投資をする複合型・総合型は、両者の特徴を併せ持ち、住居特化型に比べると景気に応じたアップサイドも期待できる一方で、オフィス特化型に比べると景気のダウンサイドにも強いということになります。ですが、様々な用途に投資をすればするほど、J-REIT全体の動きに連動する傾向が強くなり、銘柄固有の個性が薄れていくということもいえます。 複合型・総合型が銘柄数で多数を占める要因としては、一つには、複数の投資対象を持つことで、その時々の投資環境に合わせて柔軟な投資が可能になるということがあります。オフィスビルの先行きに懸念がある場合には住居への投資を増やすとか、運用する側の選択肢が広がるということですね。 別の要因としては、合併の影響があります。J-REITも資産規模が大きくなれば資金調達の選択肢が広がり、物件の取得面でも有利になります。そこで、規模の拡大を目指してJ-REIT同士で合併することがよく行われているのですが、タイプの違うJ-REIT同士が合併をすると必然的に複合方・総合型になるというわけです。 たとえば、複合型・総合型で時価総額首位の野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード:3462)は、野村不動産をスポンサーとする(旧)野村不動産マスターファンド投資法人、野村不動産オフィスファンド投資法人、野村不動産レジデンシャル投資法人が合併してできたものです。この銘柄は、エリアでは東京圏が中心ですが、用途別には様々な用途に投資をする文字通りの総合型といえます。 時価総額2位の丸紅系のユナイテッド・アーバン投資法人 (証券コード:8960)もまた複数用途にバランスよく投資をする文字通りの総合型ですが、エリア別に見ても全国に幅広く投資をする傾向があります。 これらに対して、オリックス不動産投資法人(スポンサー:オリックスグループ、証券コード:8954)、日本プライムリアルティ投資法人 (スポンサー:東京建物など、証券コード:8955)はどちらも、首都圏ないしは東京エリアのオフィスビルをメインの投資対象に据えた銘柄です。 このように、複合型・総合型といっても、投資する不動産の種類やエリアなどによって、それぞれ個性の違いがあります。