米大統領選、早くも投票をめぐって大混乱…この先一体どうなる!?
「憲法の保安官」という過激派
全米に約3000人いる保安官のうち、とくに、「憲法の保安官」と呼ばれる者がいる。自分たちはその郡の市民を守るために存在し、自分たちが応える唯一の権力はその市民と憲法であり、したがって連邦政府も州政府も自分たちに何をすべきか指示することはできず、自分たちの支配領域(アメリカでは郡)に対する最終的な権力は自分たちにあると信じている人たちだ。つまり、自称「憲法の保安官」たちは、違憲とみなす法律に抵抗または無視する権限と義務をもつ最高の法的権威であると主張していることになる。もちろん、アメリカの憲法には、保安官についての規定自体が存在しないから、彼らの主張には何の法的根拠もない。 それにもかかわらず、「憲法の保安官」らは、「憲法保安官・平和警官協会」(CSPOA)なる政治団体をもち、300人~1000人とも言われる者が属している。そもそも、アメリカ人はイギリスから保安官という役職を受け継いだ。イギリスでは国王が保安官を任命し、命令を執行し、税金を徴収していた。 植民地主義者たちは、選挙を実施することで王権を弱体化させようと考えた。彼らはしばしば、新しく開拓された地域で最初に選挙で選ばれた役人の一人であった。保安官がネイティブ・アメリカンに対する暴力を助長したり、奴隷制度から逃れた黒人を追いかけたりした恥ずべき時代もある。 1990年代、保安官たちは全米ライフル協会(NRA)と協力して、銃を購入する人々の身元調査を義務づける連邦政府と闘い、最高裁が彼らに味方したことで注目を集めた。そのうちの一人、1980年代後半にアリゾナ州(グラハム郡)のリチャード・マック保安官(その後、NRAにスカウトされ、州知事選を含むいくつかの出馬に失敗)は、CSPOAを設立して勝利を拡大した(2024年10月15日付のNYTを参照)。 トランプは保安官の大ファンで、集会に保安官と一緒に登場することも多い。在任中、彼は保安官をホワイトハウスに招き、連邦政府による不法移民の逮捕、拘留、強制送還に協力するよう奨励したという。