定年65歳の再雇用は完全義務化される?|2025年に改正される制度を解説【シン・会社のマナー】
2025年の法改正内容
高年齢者雇用安定法は、2025年4月にも改正が行なわれる予定です。現行では、65歳までの雇用確保義務の対象は原則として希望者全員ですが、一部労使協定などで対象者を限定する経過措置が残されています。この経過措置は、2025年3月までで終了し、4月から65歳までの雇用確保は完全義務化されることになります。 今でも、すでに65歳までの雇用確保措置を実施済の企業は99%以上に達していますが、完全義務化と定められることにより、高齢者が働く環境の整備は一層進むと思われます。もうひとつ、高齢者の雇用と密接な関係があるのは、雇用保険の高年齢雇用継続給付金の給付金の改正です。 この制度は、60歳以後も働き続ける人の60歳以後の賃金が、60歳到達時の賃金の75%未満になった月について、給付金が払われる制度です。支給される給付金は、賃金の減額率により支給率は変わりますが、最大で各月の賃金の15%が支給されます。 ◆制度の対象者は? 制度の対象者は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある労働者となっており、60歳から65歳までの期間限定の給付です。 継続して働く人だけでなく、60歳以後に再就職した人も対象になります。2025年施行の改正では、この給付率が最大15%から10%に縮小されます。この制度は、もともと高齢者の生活安定と企業に、高齢者の雇用確保を促すことを目的としていました。 すでに、65歳までの雇用確保がほぼ達成されたことにより、将来の制度廃止を視野にいれた改正といえるでしょう。今後は給付金制度に頼らずに、高齢者の働く環境をより一層改善していくことが望まれます。
定年延長が求められる理由
高齢者が働き続けるための法整備は、次々と進んでいるのは、少子高齢化の急速な進展にブレーキがかからないことが背景にあるといえるでしょう。若年層の減少により、企業の人手不足は深刻になっています。外国人雇用なども進んではいますが、経験豊富な高齢者の活躍を後押しすることにより、人材を確保したいという企業は数多くあります。 働く側にとっても、長く仕事を続けられることはメリットがあります。人生100年時代となり、人の老後は長くなりました。60歳で定年になったとしても、まだまだ健康で体力もある人はたくさんいます。老後の生活設計のためには、高齢になっても働きたいと考える人が多いのは自然なことでしょう。実際に、定年後の継続雇用制度を導入している企業では、8割以上の人が制度を利用して働く道を選択しています。 ◆働く高齢者の待遇改善 働き続けるための雇用確保措置は、定年後の再雇用などの継続用制度だけではありません。定年の廃止、定年年齢の引上げなど、社員のまま仕事を続けられる会社もあります。定年後再雇用だと、有期雇用契約となりますので待遇面の変化も大きくなりがちで、正社員と比べると不安定な立場であることは否めません。高齢者雇用継続給付金の縮小に加え、今後70歳までの就業が奨励されている今、働く高齢者の待遇改善は重要です。 令和5年の調査段階では、定年を60歳としている企業の割合はまだ6割を超えています。一方で継続雇用制度などを含めると、66歳以上でも働ける企業の割合も増えつつあります。今後は、高齢者が定年延長などの措置により、安定した働き方ができるような環境整備が重要になると思われます。