改革開放から逆戻り、中国国民に不満広がる-政治リスクとなり得るか
(ブルームバーグ): 中国経済の奇跡が終わろうとし、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は前任者の誰も経験しなかった課題に直面している。人口14億人の中国は過去40年間、所得と富の比類なき向上を享受してきたが、今は違う。
不動産の相場急落や米国との貿易戦争、当局による企業締め付け、長期にわたった新型コロナウイルス規制などが、中国に繁栄をもたらしてきた成長エンジンを失速させた。
中国の所得はまだ増えているものの、習指導部の下では1980年代後半以後で最も鈍い伸びとなっている。不動産危機が家計資産を目減りさせ、中国社会を慎重に開放させていくという取り組みは逆回転している。
中国国民は以前とは全く違う世界に住んでいるかのように感じている。民主主義国家であれば、今のような暗いムードは政治リーダーにとってはトラブルの元となるだろう。
1980年の米大統領選を制したロナルド・レーガン氏以来、「あなたの暮らしは4年前と比べ良くなりましたか」と米国の大統領候補は有権者に問いかけてきた。答えが「ノー」なら、政権交代が近いことを意味する。
暗黙の了解
中国に選挙はないが、政治はある。中国の政治情勢が安定している理由の一つは、長期的に見て生活水準が向上していることだとされている。これはしばしば、明文化されていない駆け引きの一端と見なされている。共産党の統治下で豊かになり続ける限り、国民は政治に関してほとんど何も言えないことを容認している。
インフレが猛威を振るった1989年には、北京の天安門広場で民主化を求める学生らデモ参加者が流血の弾圧を受けた。しかし、大まかに言えば、1978年に鄧小平氏が第11期中央委員会第3回総会(3中総会)で「改革開放」政策を始めて以来40年以上にわたり、この取り決めは維持されてきた。
習体制でそれが崩れつつある。公式データによれば、平均所得は依然として上昇しており、世界的に見れば健全なペースだ。だが、習政権下での所得向上は改革開放時代のどの指導部よりも鈍く、勢いが衰えている。