改革開放から逆戻り、中国国民に不満広がる-政治リスクとなり得るか
人材紹介のプラットフォーム智聯招聘によると、会社員のほぼ3分の1が昨年、給与を減らした。不動産からテクノロジー、金融に至るまで、ホワイトカラーの中国国民は習氏肝いりの「共同富裕」(共に豊かになる)といった報酬などで行き過ぎた動きを抑える運動の影響を受けている。
企業調査は、工場やオフィスが採用よりも人員削減に力を入れていることを示している。中国人民銀行(中央銀行)が発表したデータによれば、国民は将来の収入について悲観的だ。
不動産が大半を占める家計資産の状況はさらに厳しい。不動産市場はスローモーションのように崩壊し、一部の都市ではマンションの評価額が2021年のピーク時から半減。中国株は同じ期間に3分の1余り下落した。
「習氏は自分が引き継いだ状況に制約されている」と米ジョンズ・ホプキンズ大学の洪源遠教授(中国政治経済学)は話す。中国の現指導部が不動産バブルや産業の過剰生産能力、高債務、少子化といった問題を全て引き起こしたわけではないが、習氏は大きな不均衡に直面せざるを得ない。
習氏の目標は、不動産投機に振り回されないより持続可能な景気拡大だ。最終的にはハイテク産業に成長の原動力として役割を託す方向だ。政府は今年の国内総生産(GDP)成長率を5%前後とすることを目標としている。1-3月(第1四半期)のデータによれば、それに近い年間成長率になりそうだ。
監視社会
さらなる刺激策も進行中だ。政府は追加支出を賄うため国債を大規模に発行し、住宅ローン金利を引き下げ、売れ残った住宅を買い取る新たな制度を導入する計画を発表。遅れに遅れていた第20期中央委員会3中総会が7月にようやく開かれる。
これら全ては、事態の悪化を許容するにも限度があると政府が考えていることを示している。人口動態や負債、過剰生産能力が中国の長期的な見通しを引き下げているのだ。
改革開放を進めた江沢民指導部は私営企業家の共産党入党を解禁。それは、繁栄の広がりに伴うより開かれた社会への慎重な移行の一環だった。