改革開放から逆戻り、中国国民に不満広がる-政治リスクとなり得るか
江氏を引き継いだ胡錦濤総書記の下では、社会の安定、つまり胡氏の言うところの「調和」がより重視されるようになった。だが、それでも公民権弁護士や労働運動家、土地の権利を訴える活動家たちは、依然として政治システムの中で声を上げることができた。
それが今、全て逆行している。企業は従業員を「習近平思想」で教育するよう強い圧力をかけられ、民間企業は共産党員を受け入れなければならず、市民社会はこれまで以上に緊密な監視下に置かれている。
習氏がそれまでの慣例を破り3期目入りを果たして以来、政府は一段と「国家安全」を優先するようになっている。調査会社コンパリテックによれば、中国の都市では2人につきほぼ1台の監視カメラが設置され、世界で最も集中的な監視体制になっているという。
中国の監視社会に関する著書もありブルームバーグ・オピニオンに寄稿しているミンシン・ペイ氏は、1270万人もの中国人が定期的に警察の監視下に置かれていると推定している。
逆戻り
要するに、習氏は統制をさらに強化しようとしている。貧困と無秩序だった毛沢東初代国家主席時代と比べると、中国では多くのことが変わった。
今日の中国ははるかに豊かで、統治水準も極めて高い。しかし、成長に関するデータと「バラエティーズ・オブ・デモクラシー」による自由の指標を組み合わせて見てみれば、中国は改革開放政策が始まる前の低成長と自由度の少ない時代に逆戻りしつつある。
将来に対する自信の欠如は、起業家を新規事業への投資に消極的にさせ、働き手の新たなスキルを学ぶ意欲を低下させる。これが民間セクターの投資が横ばいとなって理由の一つだ。
中国の技術を向上させるのに不可欠な海外からの投資は、今年に入り26%減少し、人民銀の最新のデータによれば、与信規模はこの20年近くで初めて縮小した。
悲観論は時として国民の怒りを招く。米人権団体フリーダムハウスの「中国反体制モニター」によると、経済、特に住宅市場の崩壊に関する抗議が頻発。2023年に調査員が記録した2891件の公となった反発の約8割が住宅絡みの不満で起きた。