F1分析|ラッセルに抑えられなければ勝機はあった……悔やむノリス。F1スペインGPの上位ふたりのレースペースを検証する
ノリスがラッセルに引っかかっていなかったら……?
上のグラフは、決勝レース中の先頭のマシンとの差を示したものだ。濃紺がフェルスタッペン、オレンジ色がノリスである。ノリスの線は、いずれも右肩上がり。つまり先頭を行くフェルスタッペンとの差を詰めているということが分かる。 ただ前述の通り序盤ラッセルに抑え込まれたことで、ノリスは本来いるべきだった位置よりも5秒ほど後ろを走っていた可能性がある。 もしノリスがラッセルに抑えられなかったら……その場合にはどこを走っていたのかという想定を、オレンジ色の点線で示してみた(簡易的に、第2スティント以降の全てのラップで、第1スティントでのフェルスタッペンとの最大差5.557秒を引いたモノ)。これを見ると、第2スティント終盤には、ノリスは少なくともフェルスタッペンの真後ろには迫っていたという計算だ。 こういう状況となれば、フェルスタッペン陣営はもっと早いタイミングで2回目のピットストップを行ない、ハードタイヤを履かなければならなかったかもしれない。あるいは、もっと長い距離を新品ソフトタイヤで走る必要があった可能性も考えられる。 そしてノリスが2回目のピットストップを終えた時、フェルスタッペンのすぐ後ろでコースに復帰。レース終盤15周ほどが、テール・トゥ・ノーズの激しいバトルになっていた可能性がある。しかもハードタイヤを履くか、あるいはソフトタイヤの使用距離が実際よりも伸びていたら、フェルスタッペンはより劣勢に立たされていたはずだ。 確かに、ノリスに十分勝機があったと言えそうだ。 「コース上では僕たちが一番速かったと思う。最初から最後まで、僕らが一番速かった。オーバーテイクや乱気流のせいで、今日は優勝を逃してしまった。だから十分な仕事ができなかった。単純なことだ」 レース後にノリスはそう言い放ったが、データを見るとそれも頷ける。 今後も、フェルスタッペンとノリスの激しい戦いが繰り広げることになるのか? 第11戦オーストリアGPは、もう今週末だ。
田中 健一