【27年4月】迫る新リース会計基準、経理が「今から始めるべき」8つの準備
企業会計基準委員会および日本公認会計士協会から2024年9月13日に、リースに関する会計基準やその適用指針(以下、「新リース会計基準」とする)が公表されました。 【画像】新リース会計基準 これまで具体的な適用時期については確定していない状況でしたが、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されることになりました。なお、これ以前に早期適用することも可能です。 そのため、これまでは改正動向を注視していた各社も、いよいよ準備に取り掛かりはじめています。新リース会計基準の適用に向けて、企業、中でも経理部門はどのような準備を行っていかなければならないのでしょうか。必要な8つの準備について、それぞれ解説します。
新リース会計基準の適用に備え、必要な8つの準備
1.リースとなり得る取り引きや、適用に向けた課題を洗い出す まず、新リース会計基準の適用によって新たに使用権資産やリース負債が計上される可能性のある賃貸借契約や、リース契約などを洗い出すための調査が必要となります。 新リース基準におけるリースの定義は従前と大きく変わりました。使用料や賃借料、委託料など、リース以外の名称の取り引きにも、リースの定義を満たす取り引きはさまざまに存在します。 当初は、どのような取り引きがリースの定義を満たすのか、少し理解に苦労する可能性があるため、リースの洗い出し調査を実施するに当たっては「自社に当てはめた場合にはどのようなものがリースに該当するのか」について、関係しそうな部署の担当者を対象に勉強会を開催しておきましょう。 なお、単にリースの定義を満たす取り引きの洗い出しを行うだけでなく、その洗い出し調査を通じて「リースに関する契約情報がどのように管理されているのか」または「全く管理されていないのか」なども把握しておけば、その後の業務プロセスの設計やシステム導入の要否の判断に役立つかもしれません。 また、リースの会計処理マニュアルを作成するとしたら、どのような事項をルールとして定めておかなければならないのかについても、課題として洗い出しを行っておくと、その後の準備スケジュールや、準備における人員体制の見通しに役立てられます。 2.概算影響額を算定する リースとなり得る取り引きの洗い出しがある程度できたら、一度、概算で影響額を算定しておきましょう。 新リース会計基準において、オンバランス額は、画一的に算定できるわけではありません。しかし、一定の仮定のもとに影響額の概算を把握しておくことで、どのような部署やグループ会社において、どの程度の影響がありそうか見通すことができ、その後の準備における人員確保や、準備スケジュールの見通しに役立てられます。 なお、新たに計上されることとなるリース負債の計上額が大きく、負債総額が200億円以上となってしまう可能性のある会社については、新リース会計基準の適用によって会社法上の大会社として分類されてしまうため、そのような子会社がグループ内にあるかどうか注視しましょう。 また、経営者にとっては概算でオンバランスとなる額を把握しておくことで、下記事項のような経営意思決定事項について、先んじて検討するきっかけになります。 ・リース・購入のいずれとするのがよいか ・グループ間の取引方法やセール・アンド・リースバック取引などリースを使ったスキーム自体を見直す必要があるか ・低収益物件の場合にはオンバランスしても減損リスクが同時に生じる可能性があるならば契約条件や取り引きの継続自体の見直しを行うか 3.リースの会計処理方針、リースの判断マニュアル、リースの会計処理マニュアルなどを策定する 多数のリース契約から、オンバランス額を算定するためには、共益費をリース料に含めて算定するか否か、リース期間はどのように設定するか、割引率はどのような率を使用するのかなどを事前に決めてからリースのオンバランス額を算定しないと、作業のやり直しが発生してしまいます。 そのため、前述の「1.リースとなり得る取り引きや、適用に向けた課題を洗い出す」を踏まえて、リースの判断マニュアルや、リースの会計処理マニュアルなどを事前に策定しておくことで、その後のデータ登録作業における作業のやり直しを防げます。 なお、上場会社や会社法上の大会社では、公認会計士や監査法人による監査証明が必要です。このため、このリースの判断マニュアルや、会計処理マニュアルなどで定めた内容について、監査上も妥当と判断し得るものであるのか、公認会計士や監査法人に相談をしながら進めていくことは、作業のやり直しを防ぐ上で重要です。 4.業務プロセスを構築し、必要に応じてシステム導入や改修を行う リースをオンバランス計上するには、リース料や割引率、リース期間などから、取得価額相当額や減価償却費相当額を算定していかなければなりません。そのため、多くの会社では、リースに特化したリース計算システムを導入することになると思われます。 ただし、リース契約はさまざまな部署で契約締結処理が行われていることが多いため、会計処理を行う経理部門は、各部署が保有している契約書からオンバランス処理に必要な情報を収集しなければなりません。そのため、リース計算システムを導入すればそれだけで解決するというケースはまれでしょう。 例えば、以下のような契約情報の収集パターンを選択し、または組み合わせて、契約情報の収集・管理およびオンバランス計上額の算定、その後の仕訳起票までの業務プロセス(「それら業務プロセスにおける適切な内部統制」を含む)を構築していく必要があります。