不登校になりゲームにのめり込む息子「大切な居場所」依存に悩む親の模索 #こどもをまもる
「やめる」「やめない」ではなく「依存先」を増やす
子どもがゲーム依存になるきっかけには自身の環境の変化もある。 埼玉県さいたま市の精神科クリニック。数年前の秋、中学1年生の男子生徒と母親が相談に訪れた。男子生徒は不登校でゲームにはまっていた。小学校時代は優等生で、中学受験で難関私立中学に進学。だが、授業が始まると課題が多く出され、スケジュール管理が難しくなった。 ゲーム時間が急激に増えた。オンライン対戦ゲームにのめり込み、平日は深夜まで、休日は一日中続けた。昼夜も逆転して体調を崩し、欠席も増えた。1学期の期末テスト前、ゲームを続ける男子生徒を見かねて、父親が自宅のWi-Fiを切った。すると、男子生徒は見たことがないほど怒り、暴れた。その後、自分の部屋にこもるようになり、2学期は始業式と数日だけ通い、不登校になった。
この男子生徒はクリニックで心理師の問い掛けに対し、ポツポツとこう答えた。 「勉強で一つつまずくと頭がいっぱいになってしまいます。その間に授業が進んでしまって、置いていかれることが出てきた」 対応していたのは、依存症が専門の「白峰クリニック」の公認心理師・金田一賢顕さんだ。金田一さんは、ゲーム依存の子どもがいる保護者のカウンセリングを年間50組ほど行っているという。上記の事例は金田一さんが、カウンセリングをした複数のケースから共通する要素を織り交ぜたものだ。
複数回のカウンセリングの後、家族は生徒の気持ちを理解し、会話が増えていった。金田一さんは生徒と家族の同意を得て、学校担任やスクールカウンセラーと生徒の特性を共有した。学校側は生徒に合った学習方法を考え、生徒は2学期後半から別教室で数時間だけの登校を再開し、3学期には元の教室に戻った。部活、塾などが増えて忙しくなると、ゲームの時間は減っていった。 「依存症の方の置かれている状況は、依存先がなくなり、限られた物事にしか依存できなくなるといえると思います。『勉強への依存』は言い過ぎかもしれませんが、成績が下がることに不安を感じている子が、成績で評価されることが難しくなった場合、依存先を別のものに求めるケースはあります」