関空、神戸の新飛行ルート議論大詰め 大阪万博契機の航空需要拡大取り込みへ準備着々
訪日客が急増する中、関西国際、神戸の両空港の発着枠拡大を実現する新飛行ルート導入に向けた議論が大詰めを迎えている。導入されれば、関空は令和元年に旅客数2493万人だった国際線の年間受け入れ能力を4千万人に拡大、神戸は国際化に道筋がつく。2025年大阪・関西万博を機に、さらなる増加が見込まれる航空需要の取り込みに向け準備は着々と進んでいる。 「大阪、関西の大きな経済成長につながる関空の機能強化に大きな一歩になる」 5月27日、大阪府南部自治体の市町長らとの協議会で、吉村洋文府知事は新ルート案に関空地元で合意が得られことを受け、こう語った。 関空は新型コロナウイルス禍前、既に訪日客の急増で国際線受け入れ能力の限界を迎えていた。コロナ禍で激減したが、昨年5月の「5類」移行後は歴史的な円安を背景に急回復。今年4月には158万6千人の外国人旅客が国際線を利用し、単月で開港以来最高を記録した。 ただ、利用拡大に向けたネックは発着枠の制限があることだった。関空では1時間あたりの離着陸を45回にとどめている。出発の飛行機では、陸上通過時に必要な高度8千フィート(約2400メートル)以上を確保しようと海上を大きく迂回しなければならず、飛行ルートが混雑するために制限が必要だった。 特に、明石海峡上空では大阪(伊丹)、神戸を含む3空港の飛行ルートが重なる。一番上空を大阪の出発機、2番目を関空出発機、その下を風向きにもよるが関空の到着機、一番下を神戸の離着陸機が飛ぶ「4層構造」で運用することもあり、安全な飛行間隔の確保が難しくなりつつあった。こうした混雑状況の打開策が、飛行機を分散させるための新飛行ルートの設定だった。 このため令和4年9月に官民で3空港の在り方を議論する「関西3空港懇談会」が国交省に新飛行ルートの設定を要望した。飽和状態ともいえる大阪以外の関空と神戸に航空需要の伸びしろを見いだした利用拡大がねらいだ。それに対し同省は5年6月、淡路島上空を通過するなどの新しい飛行ルート案を提示していた。 新ルート案は、陸域の上空通過時の高度制限が8千フィートより低くなるため騒音による影響が懸念された。このため関係3府県の環境検証委員会が検証した結果、今年1月に「合理的な見直しだ」との報告書をまとめた。これを踏まえ、3空港懇は国交省との議論を重ね、各府県で意見を集約しており、大阪府では5月に関空の地元と合意。今夏にも3空港懇として合意をまとめる見通しだ。