サッカー日本代表の攻撃的3バックはワールドカップ本大会まで続くか? 中国戦では大成功
【後半は縦パスが一気に増加】 さらに日本優勢に拍車をかけたポイントが、中国が後半から布陣を3バックにシフトチェンジしたことだった。 試合後、イバンコビッチ監督はその理由について「前半の終わりの時間帯から守備が機能していないことがわかったので、後半は中盤に人数を増やしてインテンシティを上げたかった」と語ったが、ピッチ上ではその狙いとは裏腹な現象が起きていた。それは、指揮官が狙いとした3-5-2ではなく、後ろに重たい5-3-2になってしまった点だ。 これにより、5-3-2の「3」の両脇に大きなスペースが生まれ、そこを板倉滉と町田浩樹のふたりのストッパーが前に出て中国の3人のMFを動かしたり、久保や南野がそのスペースでボールを受けたりと、前半と比べて日本の中央攻撃が活性化した。 前半はサイドからのクロスを中心にゴールに襲い掛かったが、後半は積極的に中央への縦パスを供給した結果、前半6本だった縦パスが後半は16本に増加し、そのうち町田の縦パスを起点に南野が2ゴールを決めることに成功した。 一方、前半の15本から12本に微減したクロスについても、サイドの深いエリアからのマイナス方向のクロスより、スペースの空いている手前のエリアからのプラス方向のクロスが増加。伊東のクロスから前田がヘッドで決めたゴールは、まさにそれだった。 結局、ボール支配率で72.7%対27.3%、シュート数も15本対1本と、ほとんどのスタッツで日本が中国を大きく上回る試合となった。それも含めて、今回は中国の失策に加え、それを逃さなかった日本が攻撃的3バックを機能させた試合と総括していいだろう。仮に大量ゴールにならなかったとしても、内容的には問題のない試合だったと言える。
【バーレーン戦はどのシステムで戦うのか】 注目すべきは、10日(日本時間11日1時)に予定される次節アウェーでのバーレーン戦だ。 「今日は3バックで戦ったなかで攻撃的な選手をサイドに配置しているところを、守備的な選手に代えて、よりいい守備から攻撃を、とも考えながらチーム編成することを考えています」 大勝した中国戦後の記者会見の壇上で、森保監督はそう語った。つまりそのコメントからは、必ずしも今回の中国戦で採用した攻撃的3バックシステムを貫く構えではないことがうかがえる。 現状、日本がこれまで採用してきた布陣は、アジアカップや3月の北朝鮮戦でも採用した従来のメイン布陣の4-2-3-1と、その変形の4-3-3。加えて、攻撃的3-4-2-1と守備的3-4-2-1の計4パターン。 ただし、3-4-2-1の2パターンは、両WBにアタッカーふたりを配置するか、ひとりもしくはふたりのDF(サイドバック)を配置するかで、攻撃重視で戦うのか、守備重視で戦うのかを使い分けようとしているように解釈できる。 果たして、運用方法ではなく、人選によって同じ3バックシステムを使い分けようとするその手法が、問題を生じさせることにはならないのか。 アウェーでのバーレーン戦は、まずそこに興味がそそられる。
中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi