普通の人より苦労したから、離婚とか嫌なんで--アンガールズ田中卓志の「幸せ」
「同世代の芸人とも最近よく話すんですけど、今、このお笑い芸人が大量にいる状態で、もう一回ゼロから芸人を始める勇気があるか?っていったら、『いや、無理』ってみんな言うんですよ。抜きん出るのが大変だし、テレビに出始めのときからすでに面白い人も多い。エピソードトークもできて、何かちょっと割って入ってパッと言ったりするような新人がいっぱいいます。これはたぶん、大量にSNSとかでお笑いの映像が見られるようになったからだと思うんです。データ量が違う。俺らの頃って、レンタルビデオ屋でネプチューンさんの単独ライブのビデオ借りたりとか。お笑いのビデオがある棚なんて、すごく少なかった。そう考えると、今のお笑い界というのは、全体の底上げがすごいです」 次から次へと現れる、お笑いの新しい才能に、不安や焦りを感じることはあるか。 「いや、逆にありがたいですね。お笑いの文化が当たり前になって、芸人の立場がこの数十年ですごく上がったと思いますし。どんどん面白い人が出て、お笑い界に活気が生まれないと、俺も仕事なくなってきますから。若い人たちと、俺たちがやる仕事って、また微妙に違うから、それはそれでいいという考えです」
『キモカワイイ』を背負ってる感じが、キツかった
とはいえ、お笑い界で成功を掴めるのは、やはりほんの一握り。 デビュー4、5年の頃、“キモカワイイ”ブームも落ち着いて仕事が激減し、「消えるのではないか」という不安を抱いた時期もあったと言うが。 「『キモカワイイ』を背負ってる感じが、キツかったですね。自分ではどうにもならないんで、ネタをとにかく書いてみる、そういうことを必死でやりましたけど。そのうち楽屋で藤本さんとかに、『キモいだけやろ』っていじられているうちに、ああ、この方がわかりやすいのかもしれないと思うようになって。収録中に『キモいだけやねん』って言ってもらって、それに反論する形になったら、それがウケたんですよ」 アンガールズ再ブレイクのきっかけを作ってくれたのは、FUJIWARAの藤本敏史だった。 「あと俺、これはデビューして7、8年くらいかな。『嘘っぽくなるのが嫌』みたいな気持ちがあって。例えば、あまりにもわかりやすいドッキリを仕掛けられた時に気づいちゃって、ついリアクションが薄くなっちゃったんですよ。ところが藤本さんは、番組で明らかに作り物のイノシシに、めちゃくちゃひっくり返って驚いてたんです。すごいな、と思った。嘘とか気づくとか、そういうのは視聴者からしたら、どうでもいいじゃんと思った。お笑い芸人なんだから、リアクションが面白ければいい。やりきる方がプロなんだと。藤本さんにその気持ちを伝えたら、『せやで』って。『お前がどう思うかは関係ない。ウケるように持っていかなあかんねん』。もっと広い範囲で楽しませる笑いを考えること。そのきっかけをくれた藤本さんには、本当に感謝してます」