阪神が”第3の武器”で5割復帰!
平良は5回まで阪神打線を”ゼロ封”し、その時点で一時、両リーグを通じて防御率トップに立った。阪神はここまで平良と2試合対戦。1勝1敗ながら、それぞれ1点しか取れずに攻略できていなかった。この日も6安打に終わったが、一貫して苦手とする平良に足でプレッシャーをかけ続けた。 3回には内野安打で出塁した植田海がバッテリーの無警戒のスキを突き二死から三盗を決めた。5回には一死一塁で、走者・梅野-打者・木浪聖也の2人にカウント1-1からエンドランのサイン。木浪は空振りしたが、戸柱の送球ミスを誘い、梅野は三塁へ進みチャンスを広げた。得点にはつながらなかったが、平良に目に見えないプレッシャーをジワジワと与え続けたのである。 「打てないなら足で」の”第3の武器”が天敵を攻略した典型的なゲームだった。梶谷隆幸の先頭打者ホームラン以降、爆発力のあるDeNA打線にゼロを並べさせた投手リレーが、その機動力勝負を可能にした。 逆転打を決めた大山は、2016年のドラフト1位。島田は2017年のドラフト4位で金本前監督時代の獲得選手である。江越は、和田豊監督時代の2014年のドラフト3位、植田も同年の5位指名だが、いずれもフロントが「スピードと身体能力」の”一芸”に秀でた2人を意識的にリストアップしたもの。2018年には、掛布雅之氏の退任に伴い、2軍監督に就任した矢野監督が、江越、島田、植田の機動力を使い、ファームで日本一となった。フロントが計画的に育成計画を練った“金本遺産”である。 阪神で繰り返されてきた”負のスパイラル”に「前任者否定」がある。選手起用の“好き嫌い“が、表面化することだ。それを現場にあからさまにやられるとフロントの中長期の編成計画が停滞する。阪神は、現場重視型の編成方針を取る傾向が強いため、時に、そこに矛盾が生まれるが、フロントの考えている育成の継続性と現場の起用がマッチすれば、この日のゲームのような結果を生む。決して矢野監督は、金本前監督の野球を継承しているわけではない。だが、フロントの中長期を睨んだ努力の結晶とも言える“金本遺産“が、矢野流にアレンジされて立派な戦力になっている。 引き分けを挟んだ3連敗を止めて勝率を5割に戻した。4日からは5ゲーム差で追う首位巨人を甲子園に迎えての3連戦。そこから試練の9連戦が続く。広島から移動日無しで、横浜で試合を行う強行スケジュールもある。 「しっかりとジャイアンツを叩いて9連戦で大きく勝ち越せるように頑張っていく」 矢野監督はそう誓った。