東出昌大「『なるようにしかなんねぇ』で“大人”をやっているだけ」。就活生に求められる「信念」を、面接官は果たして持ち合わせているのか?
一貫していない自分が恥ずかしい
<Letter No.22 21歳にもなるのに、自分の軸や信念がない、定まらないです。 現在就職活動をしています。その中で、自分の過去の経験、自分の将来やりたいこと、企業との3つの一貫性を持たせて、話す必要があると思うのです。 しかし、私は過去の経験と将来やりたいことが必ずしも一貫しているわけではなく、もうこの人生を歩んできたからこういう未来を歩むしかないのかな、と諦めのような気持ちを抱く一方で、まだ別にやりたいことがあるような気がする、というふわふわしてしまっています。就活がうまく行かないのは、このような逡巡の念が企業の方にも見破られているからなのではと推測しています。 また、私は東出さんのように「私はこれを選んだんだ!」という、自分の信念を持って生きる人をとても尊敬していてかっこいい大人だと思います。そして自分にはそのようなものがないことを恥ずかしいと思います。 どうすれば自分の信念をもって、自分の人生を自分軸で選択できるようになるのでしょうか。> 東出 私はエントリーシートを書いたこともないですが、就活に悩んできた友人が何人もいて、いろいろ話してきました。そこでよく聞くのが「自分は必要とされてないんだ」と絶望したという話なんですよね。受験の場合はシンプルで、点数が足りないと落ちる。だけど就活は採用の基準がブラックボックスだから、落とされるたびに自分の存在自体を否定された気になってしまう。そういう否定を何十回も経験したら、そりゃキツいですよ。でもこれは日本社会の歪さであって、相談者さんが気に病むことはないんです。というか、すべての就活生は、就活がうまくいかないからって自分に価値がないなんて思う必要はない。 ──でも、頭ではわかっていても、渦中にいるとなかなか冷静にはなれないですよね。いつ終わるんだ……という絶望感は、私も身に覚えがあります。 東出 この相談者さんが素晴らしいところは、まさにそこなのかもしれない。この方は絶望の中にいながらも、自分のことを主観も客観も伴わせて冷静に分析できている。この態度を、私はものすごく魅力的に感じます。 私だったら、相談者さんみたいに、社会のジレンマに気づいて真正面から苦しみ、その思いをちゃんと言葉にできる人と仕事がしたい。なんなら面接でもその自分の抱える苦しみを、実際に打ち明けてみるのもいいんじゃないでしょうか。「東出は普通の社会を知らないから、そんな理想論が言えるんだ」と言われるかもしれませんが、意外と響く大人もいるんじゃないかな。 ──建前じゃなく、本音をぶつけてみると。 東出 もちろんこの戦略がハマるかどうかは、業界にもよると思うんですよ。クリエイティビティが必要とされる業界の人間に本音をぶつけたら「おもしれえな」と思ってもらえる可能性はある。でも、ホスピタリティが必要なサービス業だったら「本音はいいから建前でもてなしてくれよ」と思われるかもしれない。とはいえ、面接官の前で本音を言えたっていう経験はきっと、その後の自信にも繋がると思うんですよね。自分の思いを大切にできたってことだから。 あと、相談者さんのように大学生くらいだと、大人ってすげえって圧倒されるのかもしれませんが、マジでそんなことないです。