川崎が名古屋との”首位攻防戦”で証明した「真の堅守」とは?
母国イタリアの伝統である堅い守備を伝授したマッシモ・フィッカデンティ監督が喉の痛みを訴え、ベンチ入りを見送るアクシデントが発生した。新型コロナウイルス感染のリスクを排除できなかったための措置だが、たとえベンチで采配を振るったとしても勝利はつかめなかったはずだ。 川崎側の心理を表現すれば、名古屋には同じ豊田スタジアムで昨年8月に0-1の黒星を喫し、連勝を10で止められた借りがあった。その後も今度は12連勝をマークするなど、他の追随を許さない独走優勝を果たして臨む今シーズンのモチベーションを、鬼木監督はこう表現する。 「サッカーでJリーグを引っ張りたい、という思いを選手たちは抱いている」 歴代最多勝ち点や最多勝利数、最多得点などをマークした昨シーズンをさらに超える川崎を見せる。モチベーションの高さが激しさを増した「即時奪回」に反映。開幕から11勝2分けと無敗をキープするだけでなく、34得点をあげた全13試合でふた桁のシュートを放ち、8本だった名古屋戦を含めて12試合連続で被シュート数をひと桁に封じ込めるなど攻守両面で隙がない。 中4日で迎える5月4日の次節では再び名古屋を、今度はホームの等々力陸上競技場に迎える。両チームともに今後にACLの戦いを控えている変則日程下で生まれた、リーグ戦では極めて異例となる同一チームとの連戦へ、鬼木監督もあらためて気持ちを引き締める。 「アウェイで勝てたことはすごく大きいが、この勝利に一喜一憂するのではなく、ホームで勝たないと意味がないと選手たちにも伝えました」 勝負ごとに絶対はないが、今シーズンの初対戦で露になった守備に対する意識の違いはそう簡単には覆らない。打倒・川崎の最有力と目されてきた名古屋が初対戦で惨敗を喫し、勝ち点差を詰められる直接対決も前半戦で終えてしまう状況で、川崎を止められるチームは現れるのだろうか。 可能性があるとすれば、ボールポゼッションの高さとハイプレスを融合させたスタイルで3位につける鳥栖だろうか。今月7日の対戦では退場者を出した後半に失点して0-1で惜敗したが、川崎にも通じるスタイルで真っ向勝負した前半は、シュート数で5本ずつと互角に渡り合った。 ただ、鳥栖のホーム、駅前不動産スタジアムで対峙するのは11月6日の第35節。理想を常に高く掲げ、チーム内のハイレベルな競争もあって、ピッチに立つすべての選手が貪欲に「即時奪回」を実践する川崎が、鳥栖との再戦を前に2シーズン連続4度目の美酒に酔っている可能性が高い。 (文責・藤江直人/スポーツライター)