子どもを叩いてしまいそう...児童虐待を防ぐために知っておくべき法律の話
児童相談所の葛藤
ところで、児童相談所にも“葛藤“があるんです。 というのも、児童相談所は、「虐待している親から子どもを保護するために離す」という役割をもつとともに、「子育てに悩む親を支援する」という役割も担っています。たとえば……。 ―― Aちゃんのお母さんBさんを、児童相談所の児童福祉士として支援していたCさん。ふだんからBさんはCさんに子育ての悩みなどを 打ち明けていて、関係は良好でした。しかしあるとき、Aちゃんから、「お母さんに叩かれる」という訴えが……。児童相談所は、いろいろ慎重に調査をした結果、最終的に一時保護を決断。Bさんに通知文書を手渡すと、Bさんはその場で泣きくずれてしまいました。―― 昨日まで、育児の相談をするなかで「一緒にがんばりましょう!」と声をかけてくれていた組織から、突然、一時保護の通知を受けたら? ずっと味方だと信じていた存在から「裏切られた」と感じるかもしれません。また、「子どもを奪われた」とも感じるかもしれません。実際に、児童相談所の職員に対して「このまま死んでやる」といったり、強い敵意をもって待ち伏せをしたりする人もいるんです。 さらに、一時保護したあとでも、子どもをふたたび家庭に帰すことができるかどうかを検討しなければいけませんよね。そのためには、保護者とじっくり話し合わなければなりませんが、一度崩れてしまった関係を修復するのは、とてもむずかしいことです。 児童相談所は、葛藤を抱えながらも、「介入」と「支援」という相反する役割を同時にこなして奮闘しています。
子どものためにも、親はまず自分を大切に
子育てをしていると、いろんな不安や、いろんな心配や、いろんなイライラが、たくさんあると思います。 そんなときは、とにかく、だれかに話してみてほしいのです。行政も、民間団体も、地域も、きっと助けてくれるはずです。 その一方で、子どもの命に危険がおよんでいて一刻を争う深刻な虐待もあります。その場合、まわりの人は、必要だと感じたら迷わず、児童相談所に相談してみてほしいのです。この世に希望とともに生まれてきた子どもの、かけがえのない未来のためです。
遠藤研一郎