子どもを叩いてしまいそう...児童虐待を防ぐために知っておくべき法律の話
虐待でもっとも多いのは“心理的虐待“
愛情にはいろんな形や表現のしかたがありますが、ほとんどの親は、わが子に対して、自分なりの愛情をたくさん注いでいます。子どもも親からの愛情を受けることによって、自分は守られているという安心感をもちます。 でも同時に、子どもに愛情を注ぐのがむずかしくなってしまう親もいるのが現実です。それは時として、「虐待」という形であらわれます。 そもそも、児童虐待とは、なんでしょうか? 一般的には、「子どもの体や心を傷つけて、子どもの成長や人格形成に大きな影響を与えること」をいいます。具体的には、「児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)」2条のなかで、図のような4つが児童虐待であると定義されています。 このなかで、とくに件数として多いのは「心理的虐待」です。 「あんたなんか、産まなきゃよかった!」と子どもに暴言をぶつけたり、酒に酔って子どもの前で激しい夫婦げんかをしたりするなど、子どもを精神的に追いつめてしまういろいろな例が報告されています。
世界中の子どもがもつ権利
ところで、みなさんは、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」というものを知っていますか? “世界中のすべての子どもたちがもつ権利“について定めた条約です。1989年に国連で採択され、翌年に発効されています。 たくさんの国がこの条約を結んでいて、日本も1994年に結ぶことになりました。児童虐待が社会問題として考えられるようになるきっかけになった、大切な条約です。 この条約は、子どもの基本的人権を国際的に保障するためにつくられたもので、全部で54の条文で構成されています。とくに、次のような内容が柱となっています。 ◯生きる権利……すべての子どもの命が守られること。病気やケガをしたときに、きちんと治療が受けられること。 ◯育つ権利……心や体がすこやかに成長できるために必要な、医療や教育、生活への支援を受けること。休んだり、遊んだりすること。 ◯守られる権利……暴力や搾取、有害な労働などから守られること。また、子どもたちのプライバシーが守られること。また、虐待や放任から守られること。 ◯参加する権利……知りたいことを知ることができること。また、自由に自分の意見を言ったりすること。 この条約からもわかるとおり、“児童虐待は、子どもが当然にもっているはずの権利を侵害する行為“です。決して許されるものではありません(児童虐待防止法3条)。