子どもを叩いてしまいそう...児童虐待を防ぐために知っておくべき法律の話
虐待をした親は……
虐待をしてしまうと、親とはいえ、刑事的責任に問われる可能性があります。 たとえば、「保護責任者遺棄罪(刑法218条)」、「遺棄等致死罪(刑法219条)」、「重過失致死罪(刑法211条)」、「傷害罪(刑法204条)」、「傷害致死罪(刑法205条)」など、さまざまな犯罪にあたるおそれがあります。 また、民事上だとどうでしょうか? 親は通常「親権」をもっていますが、親の言動が子どもの監護・教育にふさわしくないときには、子どもを保護するため、子ども本人を含む特定の人からの申し立てによって、親から親権をうばう制度(親権喪失・停止。民法834条、834条の2)があります。
なぜ、児童虐待は起こるの?
では、どうして児童虐待が起こってしまうんでしょうか。むずかしい問題ですが、ちょっと考えてみたいと思います。 一般的には、身体的、精神的、社会的、経済的な要因が複雑にからみ合って起こるといわれていて、一概に原因を断定することはできません。ただ、よく指摘されるものとしては、次のようなものがあります。 たとえば、親側の要因として、育児に対する不安や、疲れによるストレスなどがあると、虐待に結びつきやすいといわれています。毎日、何があるかわからない子育ては、緊張の連続ですからね。 また、親自身が子どものころに虐待を受けて育つと、自分の子どもを虐待してしまう場合があることも指摘されています。自分では、どうしてもコントロールがむずかしい部分があるのかもしれません。 それから、子ども側の要因として、子どもに発達の遅れや障がいなどがあったりするときに、親が将来への不安を感じたり、余裕がなくなったりして虐待に走ってしまうケースがあるといわれています。 また、夫婦間の不和や経済的な困窮、失業など、家庭内のストレスが虐待のきっかけになってしまうこともあれば、子どもへの過度な期待から、度をこえた要求をしてしまうこと、そして、子連れ再婚や内縁関係のなかで虐待が起こることもあります。 最近では、社会からの孤立という視点も指摘されています。親族や近隣とのつながりが弱くなるなかで、子育てについて相談できる相手がおらず、親が孤立してしまうことで、虐待の危険性が高まる、というわけです。 いずれにしても、児童虐待は、特殊な環境に限った話ではなく、どこの家庭にも起こりうる問題です。今回の事例でも、ルリさんを責めることなどできませんよね。それよりも、社会全体で、子育て世帯をサポートしていくことが重要です。