女子レスリング48キロ級で登坂が2連覇 その意義とは?
圧倒的な差を見せつけて決勝まで勝ち上がってきた。ウズベキスタンのタシケントで始まったレスリングの世界選手権。現地時間の10日、女子の4階級が行われたが、48kg級に出場した登坂絵莉にとって、2連覇のかかった決勝戦だけは、少し勝手が違う始まりだったらしい。「スタドニク(ロンドン五輪銀、アゼルバイジャン)が上がってくると思っていたので驚きました」。 国際レスリング連盟が発表する各階級の世界ランキングがある。現在、48kg級1位の場所には、スタドニクの名前があり、登坂は2位。前年の世界女王であるにもかかわらず、ロンドン五輪後に2人目の子どもを出産、今年、育休から復帰したばかりの25歳のスタドニクよりも下へ位置づけられていた。世界でのこの評価の違いは、試合会場のアナウンスにもあらわれていた。スタドニクの試合が始まると出場した4度の欧州選手権すべてで優勝していること、2010年の世界選手権王者で、北京五輪銅メダル、ロンドン五輪銀メダルの選手であることなどのレスリング歴が長々とアナウンスされた。一方の登坂は、昨年の世界選手権優勝と今年のワールドカップ日本優勝に貢献したこと紹介されるのみだった。 こういった格差は、日本選手にとってやむを得ない側面もある。レスリングでは春から夏にかけて欧州各地で行われる国際大会に出場し、そこで各国の選手の状況や新ルールの運用に選手も運営側も慣れていく習慣がある。しかし日本の女子選手は、トップクラスになるほど、それらの大会に出場しない。他国の選手は積極的にそれらの大会に出場し、秋の世界選手権へ向けて調整を重ね、審判など世界のスタッフたちとも顔なじみになる。距離が遠い米国のトップ選手ですら欧州遠征を必ず行っている。 ところが、日本はジュニア世代こそ春にスウェーデン遠征を行うが、世界チャンピオンが欧州遠征に参加することはほとんどない。相手に手の内を知られないために、世界でもっとも厳しいと言われる日本での練習に集中して世界選手権に挑んでいる。登坂も同じように、日本で開催されたワールドカップにこそ出場したが、他はずっと日本で強化に励んできた。