あわててNISA口座を作って「オルカンください!」という人が、じつは見落としていること
「オルカン」の指名買いが起きてしまった
川崎:オルカン一択のようになっているということですね? インデックスファンドなので、それでも問題ないように思えますが、中野さんとしては何が心配ですか? 中野さん:オルカンの投資信託自体に問題はないと思います。おっしゃる通り、インデックスファンドなのでわかりやすいのは事実ですが、NISAを使って長期的な投資をする上でオルカンがどういう意味を持ってくるのかをあまり考えずに買っているように思えてしまいます。 新NISAが始まるとなって慌ててNISA口座を作った人は、「とりあえずオルカンください!」となっているような気がするんですね。オルカンがどういうファンドなのかを自分でちゃんと考えずに、「周りが買っているから自分も」となってしまっているのではないでしょうか。そしてとても危険なのは、みんなが買っているからオルカンは安全、オルカンなら儲かるという考えになってしまっていることです。オルカンは動きのある市場そのものなので、上がり続けるわけではありません。 川崎:日本や世界のマーケットを見ても、1月からはかなり急ピッチで上がっていますよね。どこかで調整が入るだろうという意見もよく聞きますが……。 中野さん:これから先も同じように上がっていくとは考えにくくて、むしろ急激に上がった反動はどこかのタイミングでくるでしょうね。慌ててNISA口座を開いてとりあえずオルカンを買っておこうと思った人は、 「必ず儲かるからって言ったのに!」「オルカンなら安心って言われたから買ったのに!」という話になる可能性があります。当然ですが金融機関で対応した人がそのようなことを言うわけはないですが、みんなが買っているから安心という神話ができてしまっているんです。
30年前の「グロソブブーム」に似ている
川崎:NISAブームというよりは、オルカンブームのようなものですか? 中野さん:そういう見方もできますね。今のオルカン人気は、30年前の「グロソブブーム」にも似ていると思います。「グロソブ」というのは「グローバルソブリン」のこと。毎月決算型で毎月分配金がもらえるので、とても人気になった投資信託です。当時もそのブームに乗り、金融機関に行って「とりあえずグロソブください」となった人がたくさんいました。グロソブのことはあまり調べないで、周りの人と同じにすれば安心という思い込みで買っていたのだと思います。それと同じことがオルカンで起きているのではないかと私は思っています。 川崎:オルカンが安心と考えているならば、マーケットが下がった時、「え? どうして?」と焦りますよね? 中野さん:おそらく焦って売ってしまうケースが多くなるでしょうね。それはとても残念だとは思うのですが、そこで改めて長期投資とは何か、NISAをどうやって活用していけばいいのかという議論が出てくるのではないでしょうか。そして10月以降には、来年のNISA口座の変更ができるようになるので、金融期間もいろいろな情報を出してくるでしょう。それを元にして勉強することもできます。 川崎:NISA元年は、もしかしたら勉強の場になるかもしれないということでしょうか? 中野さん:NISA制度を活用している人が、本当に生涯軸で資産形成を考えていくようになるには、数年かかるのではないかと思っていました。その間にマーケットは上がる、下がるを繰り返すので、しばらくは「経験のステージ」かもしれませんね。これは「オルカンだから」ということではなくて、市場全体で起こり得ること。NISA初年度、しかもスタート直後に一気にマーケットが勢いづいただけであって、投資を続けていれば「下がる」という経験は必ずするものです。下落局面を乗り越えて、経験知とすることが大切になってきますね。 新NISA制度が始まって5ヶ月。オルカン人気は続いていますが、それに警鐘を鳴らすようなお話だったと思います。オルカンがいけないということではなく、オルカンを買うこと、投資をすることの意義を考える必要性がありそうです。次の記事では、これからはアクティブファンドに期待が持てるという話をお聞きします。
川崎 さちえ(フリマアプリ・ネットオークションガイド)