一体なぜ!?相次ぐジュゴンの“餓死” 地球温暖化でタイの海に異変が…
■新たなエサ場に“海中菜園”!?
タイの海洋沿岸資源局などは、アンダマン海沿岸の複数の水域で“ジュゴンのための新たなエサ場”を作る取り組みを始めた。もともと海草が生えていた場所の近くに、海藻やケール、空心菜や白菜などを沈めて、代わりのエサにしようというのだ。様々な種類を設置するのには、ジュゴンが好むものを調べる意図もある。プーケットの実験区では、ジュゴンが海藻や白菜などを食べたとの報告も上がっている。 ただ、海洋沿岸資源局は「こうした取り組みはエサを補うかもしれないが、主な食料源としての海草に取って代わることはできない」とも述べている。それでも、有効な打開策がない中、ジュゴンの行動やエサの好みに関する多くのデータを集め、今後の保護戦略に役立てる考えだ。
■6年以内にジュゴンは半減か
タイの天然資源環境相は24年11月、気候変動対策を話し合う国際会議「COP29」で演説し、「タイは気候変動に対して最もぜい弱な国の1つだ」とした上で、「記録的な猛暑、大雨による洪水や地滑りなどに見舞われ、経済と暮らしに取り返しのつかない被害が出ている」と訴えた。 さらに、「被害には海草などの生物多様性の損失も含まれており、このままでは6年以内にジュゴンの個体数が半減する」と、ジュゴンを例えにあげて危機感を示した。 ジュゴンと海草の減少は、これまでタイが経験したことがない速さで進んでいる。アンダマン海にかつて数百頭いたジュゴンはいま、100頭ほどしか残っていないとみられている。ジュゴン絶滅の危機は、現実のものとして迫っている。