国際石油市況の軟化の裏に中国の「EVシフト」 世界最大の自動車市場で新車の半分がEV・PHVに
石油需要の変動は景気循環と密接な関係がある。国際原油相場は2024年7月から下落傾向が続き、9月上旬には1バレル当たり70ドル(約1万円)を割り込んだ。 中国では大型トラックの天然ガス車への転換も加速している その要因について、市場関係者の間では「中国の需要が予想以上に落ち込んだため」との見方が主流になっている。中国の景気は7~9月期から明らかに減速しており、石油製品の需要が減少しているのは事実だ。 ■景気循環だけでは説明できず とはいえ、石油市況を左右するのは景気循環だけではない。今日においては、再生可能エネルギーの大量導入に象徴されるグローバルな「脱炭素」の動きとともに、(世界最大の自動車市場である)中国の急速なEV(電気自動車)シフトの影響が無視できない。
中国の新車販売台数に占めるEVおよびPHV(プラグインハイブリッド車)の比率は過去数年で急上昇し、2024年8月には53.9%に達した。これは新車の2台に1台以上がEVまたはPHVになったことを意味し、中国の石油需要に(景気循環とは別の要因として)多大な影響を与えている。 中国の石油消費は世界全体の約16%を占めている。その中でも、自動車が消費する(ガソリンや軽油などの)精製石油製品の割合は大きい。
(訳注:中国では石油消費の4~5割が交通運輸セクターで使われているとされる) それだけではない。EV・PHVは普及率の上昇と同時に、1台当たりの走行距離も大幅に伸びている。中国ではネット配車サービスに(ガソリン車よりもランニングコストを抑えられる)EVが大量投入されており、個人のマイカーよりはるかに長距離を走行しているからだ。 中国の先物取引業者、華泰期貨の予想によれば、中国市場におけるEVとPHVの販売台数は2024年に1000万台を上回り、累計の保有台数は3000万台に達する。それにより、中国のガソリン消費は(すべてガソリン車だった場合に比べて)15%以上縮小する可能性があるという。