40代から意識改革を!大きな病気を未然に防ぐ「予防医療」という新発想に着目
レベルの高い標準医療を誰もが健康保険で受けられる日本は、ある意味安心して病気になれる国。それは長寿の理由である一方で、健康寿命が短くなる要因にも。 【写真】40代が老化の分かれ道!知っておきたい骨と筋肉のケア習慣 理想は、病気にならずに長生きすること。それを可能にするのが最先端の予防医療だ。内臓のプロフェッショナル、伊藤裕先生が解説する。 話を伺った人…… 伊藤裕(HIROSHI ITOH):慶應義塾大学予防医療センター特任教授。医学博士。京都大学医学部卒業。ハーバード大学、スタンフォード大学医学博士研究員を経て、慶應大学医学部教授に。世界で初めてメタボリックドミノを提唱。
病気は、ある日突然「黒」になるわけではない
「健康診断で白なら安心、黒になったときは病気が進行。でもある日突然白が黒に変わるわけじゃなく、そこにはグラデーションがある。私たちが考える予防医療は、病気でも健康でもない未病のときから同じ人を継続的にモニタリングし、ゆらぎが見られた段階から介入していくもの。白と黒の中間の小さな変化を早く見つけ、薬ではなく生活習慣や食事で病気を防ぐイメージです」。 ウェアラブルデバイスやアプリの進化により、高精度に日々の健康状態を管理し、多くのデータを解析できるようになったことも大きい。 「すでに高血圧や禁煙のアプリは保険適用で、採血なしで血糖値を測れるデバイスも。これを食べるとこんなことが起こる、とゲーム感覚で楽しめ、健康になることが達成感になる好循環が生まれます。自分の健康状態をモニターし変化を可視化した上で、何年後にこうなる可能性がある、と主治医に言われれば、自然と行動変容が起こり生活を変えられるんです」。 健康モニタリングを始めるなら早いほうがベター。40代の多くは代謝も血管も衰えるため、まさにその適齢期だ。
体も脳もシャキッと元気な高齢者の共通点とは
日本人女性の健康寿命と平均寿命の間には約12年もあるというのは残酷な事実だが、朗報もある。 「高齢者の中の介護不要者の割合は80%を超え、それは2050年になっても維持される、と推定され、80歳以上の平均歩行速度も上昇。高齢者のインターネット利用率も50%に近い」。 総人口に占める65歳以上の割合が29%を超え、近いうちに3人に1人が高齢者となる日本だが、脳も体もシャキッとした高齢者は増えている。 「60歳、65歳で線を引く時代ではありません。興味深いのは、元気で長生きしている人の中に、分野は問わず、先生と呼ばれる人が結構いること。その人たちには、責任のあることをやっている緊張感がある。思いつきで自分の好きなことをやっているだけでは飽きてきます。誰かの役に立っている、社会に必要な存在である、という気持ちがすごく大事。先生はハードルが高いなら、ボランティアもいいでしょう」。 リタイアして好きなことだけをやる自由な日々と引き換えに、失うものもある。 「社会とつながり、人と交流する日常は、長寿の重要な要素。会話をするには相手の話を理解する力が必要で、それが脳の活性化に。孤立は死亡率を上昇させます」