「永遠の若武者」船木誠勝は輝き続ける 来年デビュー40周年を迎えるボディは全盛期を維持
同期には後に闘魂三銃士となる武藤敬司、橋本真也、蝶野正洋、そして野上彰(現AKIRA)ら将来性あふれる逸材が揃っていた
【柴田惣一のプロレス現在過去未来】 「永遠の若武者」船木誠勝へのワクワク、ドキドキは40年経っても不変。「やってくれそうだ」という期待、熱い想いが止まらない。 【動画】船木誠勝がジョシュ・バーネットから勝利!!! ノアの10・14東京・後楽園ホール大会では、藤田和之と組んで、ジョシュ・バーネット、佐々木憂流迦組と対戦。藤田の差し入れ、赤マムシドリンクが効いたのか、いつにもまして鋭い動きを披露した。危ない場面もあったが、ジョシュをヒールホールドで仕留め、1年前のリベンジを果たした。 実は、ここ最近は今一つ結果を出せないでいた。全日本プロレス9・22後楽園ホール大会の6人タッグマッチで、デイビーボーイ・スミスJrにフォール負け。ストロングスタイル9・26後楽園大会では、レジェンド王者・村上和成に挑戦もベルト奪取に失敗。10・6GLEAT大阪大会では、LIDET UWF世界王者・中嶋勝彦に挑戦も敗退している。 それでもすべての対戦者は船木に敬意を表し、中嶋から「船木戦で燃えたこの火をもっと燃やして、プロレス界の地形を変えたい」と共闘を申し込まれている。 ファンだけではない。レスラーたちにも「この人は何かやってくれる」と思わせるのは凄いことだ。 思えば、デビュー前から船木は周囲に期待感を抱かせた。船木の将来を見込んだ新日本プロレスは、青森県の中学を卒業した船木を、東北地区担当の大プロモーターだった三浦庄吾氏の宮城県仙台市の自宅に囲い込んでいる。「他団体からスカウトの手が伸びないようにするため」と密かにささやかれていた。それほど船木のスター性、ポテンシャルは高かった。 実際、新日本プロレスに入門後も注目を集めている。ほぼ同期には後に闘魂三銃士となる武藤敬司、橋本真也、蝶野正洋、そして野上彰(現AKIRA)ら将来性あふれる逸材が揃っていたが、中でも船木はキラリと光っていた。 1985年3月、15歳11か月でデビュー。後のスター選手たちが競い合っていたヤングライオンたちの中でも「こいつは楽しみ」と期待通りの動きで暴れていた。 89年、欧州での武者修行中にUWF移籍話が浮上。新日本は引き留めにかかる。遠征先のイギリスに関係者が飛び、猪木も説得に乗り出したが、船木は新たな戦場を選んだ。 かつて猪木は米修行中に日本プロレスへの凱旋ではなく新団体・東京プロレスに加わったことがある。若き金の卵・船木に、自分自身が若獅子と呼ばれていたころを重ね合わせていたのかも知れない。最後は船木の背中を押している。 船木はUWF、藤原組で活躍し、パンクラスを設立。格闘技路線に舵を切り、2000年にはヒクソン・グレイシーと激突。敗れたものの、侍姿で登場した勇姿はいまだ語り草である。 いったん引退し、俳優などを経て復帰。全日本など多くの団体で暴れている。2年ほど前のこと。後楽園ホールの控室前で「柴田さん、いくつになりました?」と声を掛けられた。 いささか面食らった。年齢を答えると「そうですか。う~ん、ですよね」とにっこり。どうやら、記者、カメラマン、関係者たちが船木よりも若者ばかり、と気づきちょっとばかりショックを受けたという。自分より年上の記者を見つけて思わず聞いてしまったということだった。 キャリアは重ねても船木は常にベストコンデションを維持している。1993年にパンクラスを旗揚げした時に、衝撃を与えたハイブリッドボディは健在だ。 今でこそ、多くのレスラーがバキバキボディだが、当時はまだまだナチュラルボディが主流だった。「食べて飲んで」の昭和のレスラー像を一新させた船木らパンクラス戦士。鳥のささ身や卵の白身をメインとした徹底した食の管理、科学的なトレーニングなどで生み出したボディは、日本のプロレス界に衝撃を与えている。 常に期待感を抱かせる船木。以前、有望な若手選手が「期待するのはファンの勝手だが、期待される方の身にもなってくれ。いつも頑張って下さい、期待していますって…プレッシャーが大変でうんざりする」という趣旨の発言をしたことがある。それは偽らざる本音なのだろうが、応援していたファンは落胆。以降、その選手はあまり期待されないようになり、話題に上ることも減ったようだ。 昭和の時代「期待される人間像」という文言が賛否を呼んだ。学校でも会社でも家庭でも「人間、期待されてナンボ。期待されなくなったら終わりだ。期待される人間像になれ」と言われた。 55歳のベテランにして、積極的に各団体に参戦。いまだに期待感を抱かせる船木。例え負けが込んでも、今度こそ、何かやってくれるのではと思わせる魅力がある。「若い選手にはどうせ勝てない」ではなく「ベルトを巻くのではないか」と思わせる何かがある。それは良好なコンディションや数々の経験の上に成り立っている。是非、もうひと花もふた花も咲かせてほしい。 来年はデビュー40周年を迎える船木誠勝。侍は永遠だ。(敬称略)
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