「今までに見たことがない!」チューリップが咲いた…研究者も驚愕の理由とは
私達の身の周りは道端の雑草からスーパーに並ぶ野菜まで様々な植物で溢れていますが、よく考えてみると答えがわからない様々な疑問が頭に浮かびます。 【画像】なんと、「ダチョウの卵」より巨大…1つの細胞が20cmにもなる植物とは そんな植物にまつわる「謎」に第一線で活躍する研究者たちが答えてくれるのが日本植物生理学会WEBサイトの人気コーナー「植物Q&A」です。このたび3000を超える質問の中から厳選された60のQ&Aが1冊の本にまとまり、ブルーバックス『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』として刊行されました! 今回は収録されたQ&Aの中からチューリップの花に関するものをご紹介。質問者が見つけた、驚きのチューリップとは…?早速見てみましょう。 ※本記事は、『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
Q. 葉が花に変化したチューリップができる仕組みは?
チューリップの葉の一部が、花弁に変化しているのを見つけました。葉の根元あたりから半分が、明らかに花弁に変化しています。切り取ってくっつけたように見えるキメラ状なので、その部分から先の遺伝子が変化しているのだろうと思いました。 生物の授業でABCモデルは扱っており、実際に花の中で、雄ずい(雄しべ)や萼が花弁化したものを見たことはあります。葉から花に変化しているのは初めて見たので、遺伝子的にどのような原因でこうなるのかを知りたいです。(教員の方からの質問)
A. 「ABCモデル」を使って、理由が推測できます
まず、ご質問のチューリップと同じようなケースがないか調べてみました。すると、花の下の茎に、一部が花被片(チューリップの場合、萼片と花弁の形態的な区別がないので、両方をまとめてこのように呼びます)に変化した葉のような構造の画像と記述がいくつか見つかりました。いずれも、ほぼ半分ほどが花被片様に色付いており、残る半分は葉のように見えます。 200年以上前に遡りますが、詩人・作家として知られるドイツのゲーテは、植物などに造詣が深い自然科学者でもあり、花を構成する諸器官は葉が変形(メタモルフォーゼ)したものであるという見方を広めました。著書の『植物のメタモルフォーゼ試論』(1790年)では、葉が萼片という状態を超えて花弁の状態に近づいてしまった例として、自身が観察したチューリップを描いています。 ゲーテは、自説を支持する観察例の一つとして注目し、これを取り上げたことがうかがえます。ご質問者が見つけたチューリップは、そうした例と同様のものと思われます。実際に調べてみると、ゲーテが描いた絵の例を含め、予想以上に数多くの報告があることに少し驚きました。このような例が生じる「遺伝的な原因」を断定的に説明するのは難しいですが、次の2つのポイントから回答します。