「今までに見たことがない!」チューリップが咲いた…研究者も驚愕の理由とは
2.葉の転換ではなく花被片からの転換では?
検索して見つけた先述の画像やゲーテの絵をもう一度見てみると、いずれの場合も、通常は葉を生じない茎の高い位置に、問題の「花被片/葉」を生じています。このことと1. をあわせて考えると、花被片の一部が、葉あるいは(チューリップにはない)萼片の状態に転換したのではないか、と推察できます。B機能に当たる遺伝子の発現の変化のみでも生じる可能性がある転換だからです。 それでも、いくつかの疑問が残ります。一つめは、花被片の一部が葉に転換したものであるとすれば、正常な花被片の数が減っている(一重咲きの場合なら5枚になる)ことが予想されますが、検索した画像の例では、必ずしもそうなっていません。一方、ゲーテが描いた絵は、そうなっているように見えます。 二つめは、検索した画像の例では、「花被片/葉」の付いている位置が、他の花被片の付く位置よりも下になっていますが、なぜそうなるのかが説明できません。ゲーテが描いた例では、花被片様の部分が付く位置と葉状の部分の付く位置が上下にずれ、付け根側が2つの部分に引き裂かれています。これは説明がさらに難しくなります。このように、花被片の一部が、葉あるいは(チューリップにはない)萼片の状態に転換したのではないか、という見方にも難があります。 お答えよりも疑問のほうが多い回答になってしまいましたが、やさしい問題ではないことをお伝えできたのではないかと思います。今後の研究にも期待します。 『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』 知っているようで実は知らないことだらけ。 植物にまつわる60のナゾに、専門家集団が最新の研究成果をもとに徹底回答! ダイコンの辛さが場所によって違うのはなぜか?吉田兼好の『徒然草』に出てくる落葉の描写は正しいのか?大気中の二酸化炭素濃度の上昇は、植物にどんな影響を及ぼすのか? 本書では小学生から大学院生、趣味で植物を育てるひとから植物に関わる職業のひとまで、幅広い人からこれまでに日本植物生理学会のWEBサイトに寄せられた3000を超える質問とその回答の中から60問を厳選。 植物に興味がある大人の方はもちろん、小中学生の自由研究のテーマ探しにもピッタリです。 ※本書には2007年刊行の『これでナットク! 植物の謎』および2013年刊行の『これでナットク! 植物の謎 Part2』の内容も一部抜粋、改訂のうえ盛り込みました。
日本植物生理学会